夏風邪には冷やし茶漬け
日本の夏は、多湿なせいで夏バテや体調を崩す者は少なくない。しっかり栄養を摂ろうとしても暑さのせいで食欲がなく、栄養失調状態になっていく。結果、夏バテや夏風邪ルートに向かっていく負のスパイラルが完成してしまう。
ピピッ
「38.1度か…」
かく言う俺もそのスパイラルに飲み込まれ、夏風邪にかかってしまった。
都会の夏は暑いうえに、嫌な湿気があるせいで汗がダラダラと流れるし、そのせいで溜まるストレスを緩和するために人体がどんどん栄養を消費していく。
だからその分、しっかり栄養を取らなきゃいけないのだが、アイスキャンディーやそうめんばかり食べていたせいで、水分と炭水化物は取れていたが、その他諸々の栄養が不足しがちになってこのザマだ。
夏風邪の厄介なところは、栄養をしっかり取らなきゃ治らないことだ。普段なら摂ろうと思えるだろう。だが、ただでさえ暑い環境、体も火照っている状態だと食欲なんて湧きやしない。
風邪といったらお粥だが、お粥は熱くて食べる気が起きない。
そんな食欲がない時でも栄養を摂れる切り札がある。
それが「冷やし茶漬け」だ。
炊飯器に炊かれて残った米をザルに入れて水でよく洗う。水で洗うことで、米の周りにあるぬめりが取れるのだ。
ぬめりが取れたら、茶碗に入れて、お茶漬けの素を掛け、氷水を注ぐ。
よく冷えた水でも充分美味しいが、より涼しさを感じられる氷水の方が好きだ。
そいつを規定量よりもやや少なめに注ぐ。氷が徐々に溶けていい塩梅にしてくれるからだ。
お茶漬けには付け合わせも重要だ。
田舎のばあちゃんがお土産にと持たせてくれた野菜で作った茄子と胡瓜と人参の糠漬け。今日は茄子を一個取ってそれを切り、小皿に盛る。
これで冷やし茶漬けの完成だ。
「いただきます。」
まずは汁を一口飲む。
まだ氷が溶けていないので、濃いめのお味。塩気も効いていて夏場にはこのくらいの味付けも良いかもしれない。
次は米も一緒にかき込む。ぬめりが取れたサラサラの米が冷たい濃いめの汁とよく絡み、食欲が湧かず食事を受け付けない食道の門をするりと通り抜けていく。
ここで糠漬けを一切れいただく。
ナスのサクサクとした食感に糠漬けの香ばしさと塩気がマッチしていて、美味い。
糠漬けは栄養も豊富なので、夏風邪の身体に欲しい栄養が摂れる最高のおかずだ。
糠漬けを食べたらまた茶漬けを啜る。氷が少し溶けたのか、さっきより汁が薄くなり米とよく絡むようになった。濃い汁も美味いけど、米と合わせるのならやはり規定量くらいの濃さの方が米ともよく馴染んで美味い。
氷水で作る冷やし茶漬けはこういう味わい方が出来るのが醍醐味だ。
ウイスキーをロックで嗜むように、氷を入れることで、徐々に味が変化する冷やし茶漬けを楽しめるのだ。
冷やし茶漬けと糠漬けのループ…夏バテ,夏風邪で食欲が無くても、このループに一度でも踏み入ったら止められない。
こうなったらもう己の本能に従い、茶漬けと糠漬けの共演を最後まで楽しむだけだ。
「ご馳走様でした。」
気付けば茶碗には米粒1つ残っておらず、俺は最後までこのループから抜け出せずに完食したようだ。
正直、この切り札だけは使いたくなかった。
暫く食事がこれで固定になってしまうほどにこのループにどハマりしてしまうから。
夏に食べる冷やし茶漬け&糠漬けはズボラ飯の始まり。
キゲンさんも夏はこの食事を禁忌指定してなるべく食べないようにしていました。
結局食べちゃって、それから毎食冷やし茶漬けになっちゃいましたけどね…( ̄▽ ̄;)