縁側で嗜むアイスキャンディー
お盆休み初日。
俺は親戚の家に遊びにきていた。
ビルが多い都会の夏と違い、アスファルトが少ない田舎の夏。自然に囲まれ、土が熱を吸収してくれているのか、ここはそこまで暑くない。
「はあ〜、風が気持ちいい…」
生暖かいビル風ではなく、自然の心地よい風が来るお陰か、涼しげで夏を過ごすにはとても良い環境だ。
とはいっても、汗はだらだら流れるから暑いのは確かだ。
だがそんな暑さだからこそ味わえるものがある。それは、アイスキャンディーだ。
アイスクリームやラクトアイスと違い、ミルクやクリームが入っていないアイス…表記的に言うと「氷菓」だ。
特に箱に入って売られているような、一本一本が小さめのソーダアイスがベストだと思っている。
親戚の家に行くついでに買って冷凍庫に入れておいたアイスキャンディーを2本持ち出して、縁側で腰を下ろす。
まずは一本開け、咥える。口の中に冷気が充満し、呼吸をすると冷たい空気が肺に入ってくる。
夏の暑さもアイスに触れれば冷たい空気に早替わりだ。冬にしか吸えない冷たい空気を、夏の暑い日に味わえるのはある意味贅沢かもしれない。
冷たい空気を味わっていると、歯が入りやすい硬さになったので、そこからはアイス本体を味わっていく。噛むとしゃりしゃりとした食感を出しながらどんどん溶けていく。口の中に冷気を残しながら溶けたソーダは喉を潤すように流れる。一本食べ終える頃には口の中は冷えていた。
だが、口の中が冷えても体はまだ熱い。2本目を取り出す。
1本目を食べているうちに、この暑さで溶けかけになった2本目を取り出して袋を開ける。
アイスキャンディーの外側がほんのり水分が出かけている状態が頃合いだ。
アイスをアイスらしく味わうのはここまで。
ここからは俺流の好きな食べ方でいこう。
俺はその溶けかけのアイスキャンディーを持ち上げて下に向け、アイスの雫を一滴もこぼさぬよう上を向き、給餌を待つペンギンのように口を開けその時を待つ。
やがてアイスは棒からずるりと滑り落ち、口の中に流れ込むように入っていく。口に入ってきたら、舌と上顎の凹みの部分で挟む。すると溶けかけのアイスキャンディーはシャーベットのようにホロリと崩れる。後はこれ以上溶けないうちに…飲み込む。
半分シャーベットと化したアイスは、口から食道、胃へとゆっくり流れていく感覚が味わえる。喉越しだけでなくその先までアイスの冷たさを楽しむことができる。
この感覚は、涼しい部屋の中では味わえず、暑い環境下でこそ味わえる嗜み方だ。
少々汚らしい食べ方ではあるが、ここは知人や友人に見られる心配がない親戚の家、それも生垣に囲まれた縁側だ。だからこそ周りの目を気にせずにこの食べ方ができる。
半分屋外判定な縁側で、こんな食べ方ができる解放感を味わい、アイスで体の芯まで冷えた俺は、また田舎の涼しい風に当たりながら自然な夏の暑さを堪能するのだった。
自然に囲まれた中で食べるアイスキャンディーは格別ですぜ。
普段、アイスクリームやアイスミルクも嗜みますが、夏はやっぱりミルク少なめ、というより無しの氷菓が最高に美味いと思ってます (´ω`)