アメリカンドッグ
「…であって、この文章の意味は…午岩!」
───嗚呼、アメリカンドッグが食べたい
6限目の古文の授業中、俺こと午岩 正義は窓の外を見ながらそんなことを考えていた。
昼に食べた弁当も、5限目の終わりには消化を終えて、食べ盛りの腹の虫はまた羽を擦っている。
「おい、午岩!聞いているのか?」
「……あ、すいません、ぼーっとしてました」
「まったくお前というやつは…そんなんでいると、次のテストこそ痛い目を見るからな!」
「はい…」
先生の説教を受け、また授業が再開する。
お腹が空くせいか、はたまた5限目の体育のせいか、今日は妙にぼーっとする。
別に眠気があるわけではない。ただ、お腹が空いているのだ。
キーンコーンカーンコーン…
チャイムが鳴り、授業が終わる。
あとは終礼をするだけ。
俺はすぐに下校できるよう、帰り支度を済ませて席に座る。
「起立、礼」
今日の当番の掛け声が済み、皆が教室や廊下で喋る中、俺は生徒達の間を潜り抜けて下駄箱まで行く。
靴を履き替えたら、校門まで走り抜け、そのまま近くのコンビニまで向かう。
コンビニに着くと真っ先にレジに向かい、ヤツを探す。
ヤツは暖かいサウナの中で優雅に寝そべっていた。
「すいません、アメリカンドッグを1つ下さい」
「120円です」
お代を払い、コンビニを出る。
───ようやくこの時が来た。
腹の虫も待ち侘びていたと言わんばかりに、今日一番の大きな音を鳴らしていた。
早速紙袋からアメリカンドッグを取り出す。
揚げたてなのだろう、串から熱が伝わる。
そして、生地のほのかに甘い匂いが食欲を掻き立てる。
まずは一口。大きく口を開けて齧り付く。
サクッ…と良い音を奏で、口の中に甘い生地とソーセージの旨味が広がる。
続いて、こいつと一緒に付いてきたケチャップとマスタードを掛けて食べる。
生地の甘さをケチャップとマスタードの酸味が引き立たせ、ソーセージを更に美味しく感じさせる。
「うまぁっ…」
あまりの美味さにペロリと食べ終えてしまった。
だが、まだ楽しみはある。それは…持ち手の近く付いているカリッカリに仕上がった生地!
アメリカンドッグの醍醐味であり希少部位…まさにアメリカンドッグの『大トロ』!!
貧乏臭く見えるかもしれないが、気にしない。俺はこの大トロを最後まで味わう。
「ご馳走様でした」
アメリカンドッグを堪能し、残った串はゴミ箱に捨てて、帰路につく。
明日は何を食べよう…
そんなことを考えながら。