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末っ子皇女は幸せな結婚がお望みです!  作者: 玉響なつめ
第十章 可愛いだけじゃないですけど?
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 候補者たちは、全員が全員望んできたわけじゃない。

 だから私と最初から仲良くしたい(・・・)わけじゃなくて、彼らはそう(・・)せざるを得なかっただけだ。


 でもそれはそれで候補者の三人とも、勿論私もだけど……『政略結婚』の意味を理解しているし、それを必要とする立場にあることを自覚しているからこそ周囲の声に対して反抗することはなかった。


(私は皇女だから。でも、幸せな結婚をするためには政略相手とも歩み寄るべきで)


 だけど、相手はそのつもりがないかもしれない。

 たとえばこれが彼らの方が身分が上で、私が下の立場だったならどんなにいやな相手とであっても断りづらい状況であることはわかっている。


 私が、選べる立場にあるのは、あくまで『大国の皇帝が溺愛する末娘』だからだ。


 婚約者候補たちにとっては、どんなに私が好みでなくとも、愛せなくても、無下にはできない相手。


(やるせないなあ)


 そもそも彼らは候補者になることだって選べなかった。

 彼らには他に選択肢が与えられなかったのだと思う。


 サルトス様は、母国のどこにいても〝精霊が見えない〟ゆえに哀れな人と扱われる虚無感。

 ピエタス様は、母国のどこにいても貴族とはいえ末っ子として〝厄介者扱い〟という罪悪感。


 そして、フォルティス様はどれだけ努力しようと変えられない〝王族でありながら草食種〟という劣等感。


(どこに行っても同じ。彼らが母国で望みたかったものは母国では手に入らないとそう思っているから、帝国に行かされたと思っている)


 多分それだけじゃない、思いやって帝国に送ってくれた部分もあると思うのだけれど。

 カーシャ様は少なくともそうだったし、カトリーナ様も……あれはまあ、父様に気に入ってもらえればなんでもいいのかなって感じはするけど。


(……どうやったら、少しでも仲良くなれるかな)


 サルトス様も、ピエタス様も、自分の好きなことをしても問題ないという私に対して大分警戒心を解いたというか、警戒しなくてもいいと判断してくれたんだとは思う。

 だけど、フォルティス様は違う。


 フォルティス様は、あくまで私に対して宗主国の姫として忠義を誓っているというかなんというか……姫と騎士、その距離感なのだ。

 多分それは、彼が婚約者に選ばれていつか結婚してもそうなのだろうなと思われるほどに強固な壁のように、私の前に立ちはだかっている気がした。


「……スペルビアはいかがでしたか」


「何も変わったことはありません。……国王陛下が、姫君によろしくと仰っていました」


「そ、そうですか」

 

 会話……会話が続かないよ!

 お茶を飲んで引きつる口元を隠すのにも、私の胃袋に限界があるってんだよ!


「そういえばアル兄様には帰参のご挨拶が叶いましたか? ちょうどお戻りの日に、兄様が出かけていて会えなかったと聞いたものですから」


「アル=ニア殿下には先日ご挨拶させていただきました。その際には、労るお言葉もかけてくださり……とてもありがたいことです」


「そうですか。アル兄様は魔道具の研究を始めると寝食を忘れがちになるようですので、フォルティス様もお気づきの際にはどうか声をかけてくださいね」


 そうなのよ、うちの兄様ったら研究者肌だからなのか、ついつい気になることがあると没頭しちゃうのよね!

 そんでその研究が上手く行くと尻尾振りながら話してくれるのが大変可愛らしいんだけども、妹としてはやっぱり体調が心配じゃない?


「……何故自分にそのようなことを?」


「え? アル兄様から、フォルティス様とは時々食事を共にしていると聞いたものですから……親しくしておられるのかと」


「アル=ニア殿下と、姫君は仲がよろしいのですね」


「はい! 大好きな兄です!」


 もうね、私にアル兄様の好きなところを語らせたら長いぞ?

 ピンと立った耳も可愛いしくりっくりのおめめでしょ、尻尾は言わずもがなで最近はブラッシングもさせてくれるんだよね!

 前は恥ずかしいし本来は侍女の仕事だから止めなさいって言われたけどどーしても! ってお願いしたらやらせてくれるようになったんだよね。


 服も前は地味で目立たないものを選んでいたけど私が選んだものは着てくれているので元々背も高いしスタイルいいし箱被ってても隠しきれない皇族オーラが……。


「ハッ! すみません、私ったら自分ばかり喋ってしまって……」


 いけねえ、私もすっかりブラコンだな!


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