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末っ子皇女は幸せな結婚がお望みです!  作者: 玉響なつめ
第九章 ツンの底には…?
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 カーシャ様とカトリーナ様は、ものすごく驚いた表情を浮かべていた。

 そして、二人の表情がじわじわと変化する。


 片方は困惑に、片方は怒りに。

 どちらも慌てている風というのが不思議なところであるのだけれど。


「わっ、わっ、わたくしは貴女の母親のようなものだから心配しているのよッ! 何を考えているかわからないエルフの子よりも同じ人間族の子の方が貴女にとっても親しみやすいと思って、えっと、だから……」


「それを言うならわたくしも同じ立場ですが。アリアノット姫は精霊に愛される優しき方です、そもそもエルフ族は喧噪を好まないだけ。穏やかに過ごしたい姫にとって親として良いように計らってあげたいと思うことになんの問題が?」


 バチバチと言い争う二人に、私は目を瞬かせることしかできない。

 えっ、もしかして今二人は私の親権(?)を争っているのか……?


 いつ私が『母親がほしい』なんて言っただろう……。

 むしろ困惑しちゃうな!?

 幼女だった頃は確かに保護者として妃たちがそうなってくれたら的なことを考えもしたんだけど、今は特に必要ないし……いやだからといって純粋な好意ならありがたいと思うけれども。


「問題大ありじゃありませんこと? カーシャ様は外交などで城を空けることもありますし、その点わたくしでしたらいつでもおそばにいてあげられますし? 陛下と共に親子としての正しい愛情を姫に注いで差し上げられますわ!」


「……確かにわたくしでは難しいでしょうが、穏やかな時間と世界のありよう、多様性、そういったものについて教えて差し上げられると自負しております。人の世は喧噪に満ちておりますから、わたくしの元で少しでもアリアノット姫に寛いでいただけるよう尽力するつもりですけれど?」


 なんだろう。

 何を言い争っているんだこの二人……!


 どっちの国の子を婚約者にした方がいいってプレゼンしているのかと思ったんだけど、方向が段々怪しくなってきたんだが?


 なんだろう、ドレスをいろいろ着せてあげたいとか兄妹コーデさせたいカトリーナ様と、穏やかに精霊を介しつつ仲良い兄妹を眺めたいカーシャ様。

 あんたたち、どうした? 本当にどうした?


(ハッ、まさか……!)


 子育てが一段落すると解放感と共に虚無感もあるって前世でパートのおばちゃんが言っていたけど、それか!

 そこに私というペット枠……もとい、娘枠が現れた!

 意外と嫌いにならないなら可愛がれば良いじゃないってことか!!


(……それはそれでどうなんだ……?)

 

 呆然とする私をよそに白熱する二人の女性、困ったように周囲をオロオロする彼女のたちの侍女。カオスだ。


 そんな私の肩に、そっと手が添えられて立ち上がるよう促された。


「サルトス様?」


「ぼ、ぼくも、います!」


「ピエタス様」


「お妃様がた、大変失礼ですが僕たちはこれで失礼したいと思います」


「ぼ、ぼくらが姫君と過ごす時間! なの、で!!」


 ふおお、なんてことだ!

 美少年と癒やし系少年が姫を守るために立ち上がった!?


 いや比喩表現じゃなくてそのままだったわ。


「……ぼ、ぼ、ぼくは情けない、けど。ア、ア、アリアノット姫の、ここ、婚約者候補なので! サルトス様はソレイユのことをお願いします!」


「えっ、それはないだろう……!?」


「い、行きましょう、アリアノット様!」


 初めてピエタス様が自分から私の『婚約者候補』と名乗ってくれた。

 それが嬉しかった。

 流されるんじゃなくて、彼が自分から前に踏み出す何かがあったんだと気づいてただただ嬉しかった。


「はい!」


 後ろをついてくるサルトス様とソレイユが不満そうな声を出していたけれど、私たちはそれすら楽しくて。

 ピエタス様が、困ったようにじゃなくて心の底から楽しそうに、年頃の男の子らしい笑顔を見せてくれたのがなにより嬉しかった。


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