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末っ子皇女は幸せな結婚がお望みです!  作者: 玉響なつめ
第九章 ツンの底には…?
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 その後、私とピエタス様の関係はかなり改善された。

 元々ピエタス様は性格的にとても穏やかで争い事が苦手なタイプだったため、カトリーナ様のように競争心が強い(?)人の傍は少々彼にとって居心地の悪いものだったのだろう。


 だけれど帝国で暮らす生活は、上昇志向の強いタイプが多いという彼の家族と共にいるよりも少し気が楽なのだそうだ。

 少しばかり家族と離れて寂しいという気持ちよりもホッとするってそれどんな……いや、考えまい。


 で、だ。


(順調にいってたはずなんだけどなあ~?)


 サルトス様とはお手紙のやりとり、週一のお茶会や花壇の植え替え。

 ピエタス様とは週一回お出かけやお茶会、それから月に一、二度ある慈善活動で一緒に参加。


 もう一人の候補者は今、ご実家から連絡があって帰省中だから会えていないけど……それも来月には帰って来るというし。


 関係は徐々に改善されつつあるというのに、今は何故か目の前でカトリーナ様とカーシャ様がにらみ合っているのだ。


(どうしてこうなった……!!)


 今日は誰ともお約束のないフリーダムな日。

 珍しく父様も兄様たちとも約束がない、婚約者候補との日でもない、まさしく! 私だけの! 時間!!


 いやまあだからといって特別やることはないんだけどさ……天気がいいから王城内の図書館で本でも借りてお庭で読もうかなって思ってたらこれですよ。


 気になる書物を見つけて四阿(あずまや)にお茶とお茶菓子を用意してもらってさあ読もう! って時にカトリーナ様が声をかけてきたのだ。

 一人なのか、寂しいなら相手をしてやろうってな感じに若干……いや、大分上から目線で。

 

 どうやらカトリーナ様は出自と美貌以外では他の妃に誇れるところが弱いと気づいていたらしく、それもあって息子であるパル兄様が突出してくれたら愛しの皇帝(笑)も特別視してくれるに違いない! と本人の中では応援していたようだ。


 でも最近になって皇子たちも年齢を重ね、それぞれの責任と行動を皇帝が褒めることはあってもその功績が妃の方には影響が出ないと知って焦ってもいるらしい。


 そこに来ての私である。

 婚約者候補の件が来るまではどちらかというと『邪魔者』的な存在であった第七皇女、愛しの皇帝陛下に愛される目障りな小娘……だったわけだが、誰に何を吹き込まれたのか『皇女を大切にしたら皇帝が喜ぶ』と思ったようだ。


(……いやまあ、親切にされたらそれなりに嬉しいけどね?)


 あくまでそれなりにね!

 カトリーナ様の場合は相変わらず自分第一の発言が多くて疲れることも多いんだよなあ……多分この人も子供と接するのには慣れていないんだと思う。

 根は悪い人じゃないというのは感じている。


 だからあんまり拒絶するのも悪いかなあと思っていたら、今度はそこにカーシャ様が来てしまったのだ。


『カトリーナ妃、アリアノット様の読書の邪魔はいかがなものかと思いますよ』

 

 しかもカーシャ様はオルクス兄様と同じくあえて空気を『読まない』性格の人なもんだから出てきた言葉がこれである。

 多分カーシャ様的には私が困っているから助けてあげようという善意である。


 でもあえて空気は読まない。

 だって率直な意見を述べることを〝精霊たちが〟好むから。

 最近わかったのだ、精霊さんたちと会話していると比喩表現とか遠慮とか、そういうのは通じない。


 わかりやすく言ってほしい、どうしてほしいのか、何がいやなのか、彼らは素直なのだ。

 エルフたちはその精霊と生きていくからあの独特な感性なんだなあ……とそんなことを思いながら勃発してしまった第二妃と第三妃の争いに遠い目をするしかない。


 知っているか、これが現実逃避ってやつだ!

 そんなことを思っていると、今度は後ろから誰かがやってくる。


「……ピエタス様?」


「あ、あの、アリアノット様、おま、おまたせ、いたしました……!!」


 お約束していないはずのピエタス様が、まるで妃たちに自分の存在を主張するように大きな声を上げながら震える姿は――大変失礼だが、チワワみたいで可愛かった。


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