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末っ子皇女は幸せな結婚がお望みです!  作者: 玉響なつめ
第八章 エルフの価値観、私の価値観
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 それから数日後、オルクス兄様を通じて第三妃様からお茶会に招待された。

 内々のお話があるとのことで、私は喜んで参加することにしたのだ。

 ちょっとだけ、兄様が驚いた顔をしていたのが新鮮だったね!


 まあこれまでほんのちょっとくらいしか接点がなかった第三妃のカーシャ様だけど、この方は基本的に穏やかで物静かだ。

 オルクス兄様と同じ薄い水色の髪に同じ色の瞳。


(兄様も美形だけど、カーシャ様はまるで……作り物かなってくらいの美人だよね)


 こんな美人を妻にできるんだから皇帝ってすごいな。

 まあ美人過ぎるからこそ、ちょっと表情が乏しい感じが余計に冷たい印象を周囲に与えているのかもしれない。


「ようこそ、ヴィルジニア=アリアノット。わたくしの誘いを受けてくれたことに感謝します」


「お招きありがとうございます、第三妃様」


「どうぞ座ってください。貴女が好むという菓子と茶を用意したの。気に入ってくれれば嬉しいわ」


 どうやらオルクス兄様に私の好みを聞いて準備してくれたようだ。

 以前、サルトス様と一緒に私との茶会を行った際はカーシャ様の好みだという自然食がテーブルを飾っていた(・・・・・)けど……。

 あ、いや別にナッツが嫌いなわけじゃないのよ?

 ただナッツを数粒だけ豪奢なお皿に盛られて、ほぼ水の味しかしない果実水出されてもね? ね?


 私を招く(・・)というよりはエルフ風の食生活を学んでほしいってことだったらしいんだけど……本当に極端なんだよなあ。

 今、私の目の前にはケーキやらクッキーやらてんこ盛りでこれはこれで誰が食べるんだよって感じ。


(……カーシャ様って外交を担当しているのよね。その際の食生活はどうしているのかしら。侍従や侍女が優秀なのかな? お仕事の面では合理的で的確だろうし、この美貌なら確かに周囲の注目は浴びやすいだろうし……)


 単純に公私を分けているだけなのかもしれない。

 オルクス兄様も普段は粗食の方が好きって言っていたし、通常運転な感じで私にもサルトス様、ひいてはエルフ族を理解してもらえたらって気持ちだったのかもしれないし。


「最近、サルトスが貴女と過ごす時間をとても楽しみにしているようですね」


「そう仰っていただけるととても嬉しいです!」


「……他の候補者たちとも、関係は築けていますか?」


「どうでしょうか。そうであったら嬉しいと思っていますが……」


 いや、うん。悪い関係ではないと思うんだよね。

 ただまあ週に一度くらい……みたいな感じで調整されているけれど、今のところサルトス様以外は延期になったり相変わらず他のお妃様の関与があったりで話が進んでいないって言うか。

 私がサルトス様と仲良くなったと思えば思うほど他の候補者……ではなく、その後ろにいる人たちが焦って余計に彼らとの間に入ってこようとするから逆に仲良くなれていないんだよなあ。


 何をそんなに焦っているのやら!


「……以前にも話したかもしれませんし、本人からも聞いているでしょうが……サルトスは、我らエルフ族の中では哀れな子なのです。貴女が手を差し伸べてくれるなら、あの子にとって救いとなりましょう」


 どこかホッとしたような表情で果実水を召し上がるカーシャ様の優雅さったら!

 見習いたいところだけど……私は見惚れるよりも、やっぱりその言葉が気になった。


(可哀想、か)


 カーシャ様もサルトス様も、生粋のエルフ。

 その中でも高貴な身として育った分だけ、彼らの中で価値観は絶対なのかもしれない。

 他の人はそうでないと理解していても、自分たちの中にあるものは……みたいなね。


 私が前世の記憶を持っている分、奴隷制度に対して嫌悪感を抱くのに似ているのかもしれない。いややっぱ違うかも。


「あの子は精霊が見えない分、新たな地では価値観の違いにも苦しむかもしれませんが」


「……そんなことはありません」


「姫?」


「サルトス様はきちんとご自分で考え、エルフの価値観だけに囚われず物事を進めていくお力があると思います」


「……エルフの価値観だけに囚われない?」


 叱られるかと思ったけど、カーシャ様はキョトンとしただけだった。

 何をおかしなことを言っているのだろうということはその表情からも読み取れるくらい、私の発言はカーシャ様にとって、というかエルフにとって『馬鹿げた』発言だったのだと思う。


 だけど、私は目の前にいるカーシャ様を否定したいわけではなくて。

 ただ、サルトス様を否定しないでもらいたいと思ったのだ。


「サルトス様はどこでも生きていけます。たとえ精霊を見ることができなくても!」


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