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末っ子皇女は幸せな結婚がお望みです!  作者: 玉響なつめ
第六章 小さな姫の大冒険
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 そこから話は早かった。

 勿論馬車も速かった。強化をかけるだけであんなスピード出るとか……。

 特殊な伝令などが走る際は使うこともあるそうだけど、馬車では滅多なことじゃ使わないんだそうだ。


 というか、法律で一応使ってはいけないことになっているんだって。

 今回は皇族の特権ってことで……。


 それでまあ、城に戻ったところで医師にユベールのお母さんを診てもらい、ユベールとも面通しをして母親であることを確認。

 その上でウェールス様に対してヴェルジエット兄様が誓約魔法で『ユベールとその母親に決して無理強いしない』と誓わせた上で妹かどうかを確認させた。


(いいのかな、仮にも他国の王族に連なる人なのに)


 いや、それはそれでだからこその措置だと思うけど。

 皇族が保護した相手を相手国の王家が実は処罰するつもりだった……とかなると、この国で生まれたユベールに関しては帝国の民って扱いだろうし。

 それに十年暮らしていたならユベールのお母さんだって帝国の民として扱われるべきで、この国で襲撃を受けたんならこの国の法律でその犯人を裁くべきで。

 そしてその襲撃犯が魔国のだから、あれ? あれ? よくわからなくなってきた。


 でも、多分そういう意味も含んでいるとは思うけど……なにより大事なのは、私がそれを望んだからってことだ。

 皇女(わたし)がユベールを守ると決めたと宣言したことを、皇室が認めているのだ。


(……こんな大事になるとは思わなかった)


 とまあそんな経緯もあって、ウェールス様は苦笑しながらもその誓約を受け入れた。

 そして面会をして、彼女が自身の妹であり……そしてクラリス様の弟の恋人であり、許されるのであれば次期魔国の王妃として迎えたい女性であるとのことだった。


「……おそらく、目覚めないのは妹の魔力が全て傷に向かっているせいでしょう。我が一族は鳥人族、命の危機に瀕した時に魔力で仮死状態になるのです。……この国では魔素が足りず、体を維持するのが精一杯で魔力の回復が追いついていないのだと思われます」


「母さん……」


「そしてまさか俺の知らないところで甥が生まれていただなんて。後ほどクラリス様と魔力の形質を確認いたしますが、まず間違いなく……王子の、お子でしょう。話を聞く限り」


 売られた時に身ごもっていたとなれば、当時恋人であった魔国の王子の子であると考えるのが自然だ。

 その後、ユベールによれば母親が恋人を作ったという話も聞いていないらしいので……多分。


「精霊モドキの件ですが、おそらくは使われた魔術か何かだと思われます」


 ウェールス様によると精霊の素というか、魔素の塊? を使って相手を特定して追跡する魔法ってのが存在するらしくて、その追跡先? の相手には視認もできるから怖がらせたりする、とっても嫌な魔法らしい。

 うん、とっても嫌な魔法だ!


「禁術として近年魔国では法律で定められたものでして、使える術者に関しては国が把握している以外にもどうしても裏稼業の者などが……」


 というわけで取り締まりは難しいらしい。

 でも幸いというかなんというか、オルクス兄様が捕獲してきたモノを逆探知もできるらしいので、そこはもうウェールス様にお任せということになった。


 なんでもね、ウェールス様はシスコ……げふげふん。

 大変妹想いだったらしくてね! 早い内に両親を亡くして、兄妹で助け合って生きてきたってんだよ。

 だから王子が手を出したって聞いた日には烈火の如く怒っていてなんだったら今も許してないって言うから魔国の未来は暗い。


「……あれ? ってことは、ユベールって、王子様になっちゃうの?」


 あれあれ?

 魔国の王子様が、帝国の皇女の側仕えなんて当たり前だけどおかしな話だ。

 ってことは一緒にはいられないってことではないのか?


 思わずそんなことを経過説明の間で零せば、全員がなんとも言えない顔で私を見た。

 その顔をぐるりと見て、私はユベールと繋いだ手を……知らず知らずに強く握りしめるのだった。


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