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末っ子皇女は幸せな結婚がお望みです!  作者: 玉響なつめ
第五章 私にできること
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 私のネックレスが、光を帯びる。

 それは私が魔力を欲して行使する、そこに繋がるものがあるんだそうだ。

 理屈は知らない。今知ろうとも思わない。


 私にとって大切なのは、今、目の前でシエルが苦しんでいるということだけだ。


(シエル)


 私が馬鹿なことやってる時も、勉強が上手く行かない時も、寂しい時も嬉しい時も、いつも寄り添ってくれた。

 泣きたい時は自分の羽毛が濡れるのも気にしないで擦り寄ってくれた。


 他の大人が怖いけど、私がいる時は傍にいた。

 私のことを信じてくれたのかどうかはわからない。


 だけど。

 私は、シエルがいてくれたから、兄様たちが帰ってしまった後のこの部屋でも、寂しくなんてなかった。


(シエルには他にいなかったのかもしれない、でも)


 私にだけ、こうしてくっついてくれるのだとしたら。

 私のことを他の大人に比べたらマシだと思ってくれているのなら。


 内側に、内側に。

 少しでもシエルが『楽に』なれるようにと魔力の流れのスキマを縫って、私の回復魔法が届くようにと繰り返し繰り返し。

 私の弱い魔力ではシエルの強い魔力に弾かれてしまうけれど、それでも見えるスキマを狙って私は必死で願う。


(シエル)


 変な鳴き方をするフクロウだなって思った。

 白くてふわふわで。


(シエル、大丈夫だよ)


 私が家族に対して仲良くなりたいって言った時に、応援するように擦り寄ってくれた。

 父様が私に頬ずりして痛くなったほっぺたを心配するように羽で撫でてくれた。


 少しずつ、少しずつ。

 私の中の魔力は、いくら周囲の魔素に助けられても減っていく。


 ああ、足りなくなるかも。

 そう思った時に、なんでかはよくわからないけど『届いた』って思った。


「しえる」


 名前を呼んだその声は、自分の物だとわかっていても笑ってしまいそうなほど掠れていた。

 でも、私の目の前には私よりもずっと体が大きくて、でもまだ小さな男の子がいた。


「アリアノット」


 小さく私の名前を呼んだ彼は、綺麗な白銀の髪に、夜明けのような青い目をしていた。

 もう大丈夫。


「アリアノット様!」


「姫さん!?」


 そう思った私は彼が私にもたれかかってくるのと同時に意識が遠のくのを感じたのだった。


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