214
「ソレイユ~!!」
「キュ~ゥ!」
「あーんごめんね寂しかったよねー!」
私が駆けよって抱きしめると、ソレイユは嬉しそうにパタパタと羽と尻尾の両方を揺らした。
んんん、可愛い。
どうやら父様たちとの話し合いの間、ランスとは上手く折り合いをつけてくれたらしい。
室内で暴れた様子もないし、サルトス様もユベールも、それからエルヴェもケガをした様子もないし……。
ソレイユもランスもいいこ!
「それでね、アリアノット姫」
「あ、はい。なんでしょうサルトス様」
「ランスはこの通り大きな犬型の魔獣だろう? アリアノット姫のペットだとわかるように首輪がいると思うんだ」
「……ああ……」
うん、そうよね。
このお城だけでもかなりの広さが合って、人が入れ替わり立ち替わり……日々変動している。
そんな中でランスがいくらいい子でも、誤解されることだってあるかもしれない。
でも首輪とか、目立つ何かがあって、それが私と繋がるなら危険は減る。
王城内で魔獣がいるからって、いきなり攻撃する人はさすがにいないだろうけど……ちょっとでもお互いのためを思うなら必要な措置だ。
「それで、ランスだけに与えるとソレイユが拗ねる」
「キュッ!」
「お前が先輩だろうとそのさらに先輩は俺だけど?」
「ちょっとユベール、何張り合ってるの……」
ペットの座を巡って争わないでくれる!?
おかしいな……ユベールって私の婚約者候補なんだけどな。
当たり前のようにソレイユと張り合うの止めてもらってもいいんじゃなかろうか。
それにしても首輪。首輪か……。
「あっ、そうだ。メイリェンは?」
「先程デリア先輩に認めてもらうため、ひめさまにおやつを作ってみせると張り切って厨房に行きましたよ」
「わあ……」
自由だな。
いや、一応溶け込もうとしているのは偉い。
というかメイリェンはランスの世話係としてきたのに私のおやつを作るとはいったい……?
まあそれはともかくとして今考えるべきは首輪。
じーっとランスとソレイユを見つめる。
ランスは犬種的にはワイマラナーっぽくてグレーみがかった体も、きりっとして筋肉質な感じもかっこいいんだよな……。
ソレイユはやっぱりふわふわ羽毛もあって可愛いじゃない?
そんな対極にあるソレイユとランスに似合う、かつ、私のペットだってわかる首輪……。
(ううん、何があるだろう?)
ふと私の腕輪を見る。
青緑色の不思議な色合いの石がはまったブレスレット。聖女の証。
これに似たものが用意できたら私のペットだってわかりやすいんだろうか?
見たことない石だからなあ……。
似たのってあるのかしら。
「そうだ!」
「えっ、アリアノット姫?」
「ニア?」
「ひめさま、お供しますよ~」
走り出した私にエルヴェがついてくる。
サルトス様とユベールも慌てて私の後を追おうとしたけど、振り返って私は二人に待ってと手で合図する。
「二人はそのまま私の部屋で待っていて! すぐ戻るわ、オルクス兄様のところに行くだけだから!」
オルクス兄様は博識だし、なんだったら精霊さんが似たようなものを知っているか、あるいは譲ってくれるか交渉を手伝ってくれるかもしれないからね!
私も精霊さんたちと話せるけど、残念ながら兄様ほどしっかり協力してもらえないのが現実なので。
やっぱりチートなしのちびっ子は自分の努力が必要なんですよ! とほほ!




