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末っ子皇女は幸せな結婚がお望みです!  作者: 玉響なつめ
第二十一章 聖女は清濁併せ呑むべし
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「聖女就任、お疲れ様でございます」


「はい。ええと、皆様も……大変お疲れなご様子で……?」


 ゼエハア言いながら私のところに集まった高位神官たちは、もう疲労困憊って感じだ。

 ここに来るまでの大人の醜い争い(物理)を見てしまった身としてはドン引きなんだけど、そうも言っていられないので私は姿勢を正して深く頭を下げた。


「このたび、医療の神メディーテー様の恩恵をいただきました」


 私は神官さんたちの前に、神様たちがデザインしてくれた蔓のようなデザインのブレスレットを見せた。

 キラッと光る綺麗な石に浮かぶメディーテー様の紋様。


 それを見て神官さんたちはどよめく。


「おお……! これは紛れもなくメディーテー様の紋様……!!」


 大喜びだね!

 まあね、神の声を聞いた〝聖女〟の誕生は久しいって話だから……。


 だけどこのブレスレット、綺麗なだけで特別な力があるわけじゃないし。

 勿論、私も〝巻き込まれた一般人〟枠でしかないので、チートもないのである。


 さあここからどうすればいい?

 どうしたらいい!?


 考える余裕もなく引っ張り回されてこうなっちゃったから、舌先三寸でなんとかこの場を凌ぐしかないんだけど!?


 そうやってぐるぐる思考を巡らせていると、私の足下で寛いでいたワンちゃんがむくっと起き上がり、空に向かって吠え始めたではないか。


「わっ、どうしたの……!」


「ヒメサマ、上! なんかくる!」


 エルヴェの鋭い声に、サルトス様も弓を構える。

 上、と言われて思わず見上げた先には、何かキラキラしたものが近づいてきているなと思ったらそれはなんと火の鳥ではないか!


 ぼぉぼぉと全身が燃えている、真っ赤なのにどこか金色めいたその鳥は私の頭上を旋回するとふわりと肩に降り立った。

 そうしてスリスリと頬ずりしてきて(可愛いな!)高い綺麗な声でひと鳴きすると私の手に羽を落とした。


 その羽が今度はブレスレットに触れるとぼわっと燃え上がり、そして一冊の本になったではないか!!


(あっ、治癒の書……!)


 そうだ、メディーテー様がどうにかして送ってくれるって言っていたやつだ。

 なんとこんな劇的な渡し方をしてくださるなんて……ありがとうございますメディーテー様超助かるぅぅぅうう!!


「火の鳥は医の神メディーテー様の神聖なる御遣い……ああ、ああ、なんと尊い光景を我々は見ているのだろうか……!」


「ありがとうございますありがとうございます……」


「生きていてこんな奇跡を目の当たりにする日が来るとは……」


 高位神官さんたちが膝をついて感激したりお祈りしたり忙しい姿はなんともこっちとしては不気味というか……いやごめん、正直すぎたわ。

 一応皇女としてのこれまでの勉強のおかげで、体面を保つことはできていたと思うけどね……。


 火の鳥さんは役目を終えたと言わんばかりにもう一声鳴いてからあっという間に飛び立ってしまった。


 私の手元には、大きな本が一冊。

 ありとあらゆる医療の知識が詰め込まれた、医療の書……。


(なくさないようにしなきゃ……)


 収納魔法のかかった魔道具を、アル兄様に作ってもらおうかな。

 それでこのブレスレットにチャームとしてつけられるようにしてもらうの。


 コストはすごいかかるだろうけど、私専用ってことでちょっと無理なお願いをするのも……まあ妹特権? 皇女特権? 聖女特権?

 どれを使っても許してもらえたりしないだろうか?


 今後ばりばり働くからさ!

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