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末っ子皇女は幸せな結婚がお望みです!  作者: 玉響なつめ
第二十一章 聖女は清濁併せ呑むべし
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 とりあえずフェイさんところからお預かり(?)した子の名前はメイリェン。

 ワンちゃんに名前はないそうなので、好きにつけて欲しいとのこと。


 名付け……得意じゃないんだよなあ……。


「それよりもソレイユが受け入れてくれるかだなあ……」


「大丈夫じゃない? ヒメサマを守る駒が増える分にはペットも文句言わないでしょ」


「エルヴェは簡単に言ってくれるよね! もう!」


 父様や兄様にもなんて説明するべきか……。

 や、もうそのまま正直に話せばいいだけなんだけどね。


 聖女の認定受けに行っただけなのに何してんだ? って自分でも思うくらいなんだからパル兄様あたりにはすごい突っ込まれそうだ……。

 そうだ、アル兄様。アル兄様のお顔をモフらせてもらおう……。


 待てよ、ワンちゃんセラピーなら今リアル犬(?)がここにいたわ。

 傍らに座ってモフモフしだすと大人しくされるがままになってくれるワンちゃん。

 本当にきみ、いい子だね……!!


「お父様は魔獣を飼うことを許してくれるかしら」


「ヒメサマが言えば一発だって」


「……」


 否定は、できないんだよなあ!


 魔獣とは何かと言えば、その名の通り〝魔力を持った獣〟だ。

 普通の動物がなんらかの変移を経て魔力を得た結果、身体能力・知能ともに向上する傾向に見られる。

 

 実際にこのワンちゃんも〝(ロータス)〟の長に大事にされる程度に賢く、そして強いってことだろう。


 ただ、獣は獣だ。

 それゆえに簡単に譲れる程度の価値しかない……あるいは、皇女にならば譲っても賄賂として不足なし、なのかもしれないけども。


「それにしてもマルティレス司祭様、遅いね」


「そういえばそうだな。あいつらも戻ってこない」


 ふと思い出したように、私と一緒に魔獣をなで始めたサルトス様が言う。

 それとなんとも言えない目で見ていたフォルティス様も頷いた。


「……そうだね」


 結局いきなり魔獣を連れて帰って来ちゃったもんだから(大きい犬で通したけど)、神殿の居住区には連れては入れませんって言われちゃったんだよねー!

 それで伯父様を呼んできて欲しいって近くにいた神官さんにお願いしたんだけど、それでも来ないもんだからピエタス様とユベールが呼びに行ってくれたんだよね。


 万が一ワンちゃんが暴れたり、襲撃があった場合に備えてエルヴェとフォルティス様は残っていた方がいいからって。


 でもそこから、それなりに時間は経過しているはずだ。

 私たちが小首を傾げていると、神殿の奥から騒ぎが聞こえた。


 現れたのは神殿の偉い人たちに引っ張られる伯父様と、憤怒の形相の伯父様。


「ええい! ヴィルジニア=アリアノット様につく司祭はこの俺だけで十分だ!」


「聖女! 本物の聖女じゃぞ!? おぬし一人だけ帝国に居座ったところでどうするんじゃ! 聖女様のご意向を確認した上で百人単位の司祭団を組むべきだと……」


「聖女様はそうしたことを望んでおられぬと申しておろうが~~~!」


 私は奥でぎゃあぎゃあ言い争いながら近づいてくる人たちを思わず指さしてフォルティス様を見てしまった。


「何あれ」


「……見なくていい」


「そうだね、見なくていいよ」


「大人の醜い争いだからねー」


 エルヴェまで加わって、そっと私の目が三人の内の誰かの手に塞がれた。

 下から『くぅん』って鳴き声が聞こえたけど、ワンちゃん、それどんな気持ち?

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