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末っ子皇女は幸せな結婚がお望みです!  作者: 玉響なつめ
第二十一章 聖女は清濁併せ呑むべし
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「異端者……ですか?」


 異端者。

 それは一般的に受け入れられている思想や宗教、学説などから外れた考えを持つ人のことで……この世界では特に宗教的な意味合いが強いって以前シズエ先生が言っていたっけ。


 でもだからって弾圧されたとかそういうわけではなくて、異端者の中には宗教に対する考え方が極端だったりして、上手く馴染めなかったって話を聞いた程度。

 中には自分だけが真に神の意図を読み解けるから自分以外全員が異端者だって騒いだとかそういう……まあなんていうの? ちょっと変わった人もいたそうで。


「その程度しか」


「十分です。さて、ふむ、なんと申しましょうかな。信仰というものは時として凄まじい力を発揮する、それは皇女殿下もご存知の通り。儂もこう見えて商売の神の神殿には毎年少なくない額を寄付させていただいております」


 信じる、信じない……というよりは何かあったら助けてもらえるかも? 程度でも、人間の心には小さな余裕が生まれるのだ。

 寄付金で神殿を綺麗にしたり、慈善活動に回せば経済も回るしで一石三鳥にもなるしね!

 経済回して、商売の神様にも義理立てして、回った経済分商人としてウハウハってか。


 フェイさんはそこについてにっこり微笑んだだけでそれ以上語らなかったけど、とにかく端的に言えば――ノックスでもある程度、人々は信仰心を持っている。

 勿論そういう意味では一般的な人々に比べてモラルとか常識的な点でノックスは他の国々とは異なるのだけど……エルヴェが属する〝椿(カメリア)〟の長が創造神様の敬虔な信徒だって話もあるし。


 まあほんと、ひとそれぞれってやつなんだろうと私は割り切って話を続けてもらった。


「ここ十年少々ですかな。二十年はいっておらんと思いますが……元々、異端者として爪弾きになった者たちがノックスに逃れてくる、そういうことはありましたが先程言ったくらいの頃から、彼らは徒党を組むようになりましてな」


「はあ」


「集団の力というものは侮れない。特に強い信仰心は」


「……まさか」


「さすが聡くていらっしゃる」


 にこりとフェイさんが微笑む。

 エルヴェを見れば、エルヴェもにっこりと微笑んだ。


 現在のノックスは、四つの〝強い〟勢力が共同統治している。

 目の前のフェイさんが示すのは、つまり。


「彼らは自らを〝信仰(フィーダス)〟と名乗っております。彼ら次第ではありますが、皇女殿下はノックスにも多大なる影響を与えることが可能なお立場になっている、というわけですな!」


 朗らかにすごいこと言ってきたなオジイチャン!


 それって異端者さんたちが『おまえなんて聖女とは認めない!』とかで攻撃される可能性も孕んでいるし、逆に生贄……とか言い出す人もいるかもしれないってことでしょお!?


「……ノックスに干渉するつもりはありませんが、あちらがどのように思うかまでは私にはわからないかしら」


「まあそうでしょうなあ。ただ、これまでも聖女や聖人が出現したという噂はありましたが彼らは無反応を貫いておりました。今回、皇女殿下の話題が出始めた頃でしょうかな……彼らは随分と集会を開いて何かを語り合っておったようで」


(うわ怖……)


 ちょっとその集会で何が話されていたのか、確認はしてないわけ?

 そこ大事よ、私の身と心の安全のために!


 というか、ノックスにそういう集団がいるって知らなかったなあ……教えてほしかったなあ……。

 そういう気持ちを込めてエルヴェを見れば、彼は笑顔で小首を傾げた。


「だってヒメサマ、そんなの聞かなかったじゃん?」


 いやそうだけどお!

 わかんないものは聞きようがないってえ……!!

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