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末っ子皇女は幸せな結婚がお望みです!  作者: 玉響なつめ
第二十一章 聖女は清濁併せ呑むべし
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「腹も膨れたことですし、そこ(・・)椿(カメリア)の小童の態度を見て十二分に皇女殿下のお人柄、拝見いたしましたでな。本題に入らせていただきましょうかのう」


「!」


「っと、その前に……口直しの果物を運ばせましょう。食後の茶も会話には必要ですでな」


 おおっと~~!?

 食いしん坊の印象がついてないかな……!?


 いや、まあ……果物に罪はないから出されたら食べるけど。


「そこな小童が儂を知っておるように、儂も小童のことはよぅく(・・・)知っておりますでな。そやつが真面目にお仕えしている様子を見て、皇女殿下は対話に値する御方と判断させていただきました」


「……そう」


 真面目……とは……?


 主人の意向を無視してお料理をたんまり載せたり、揶揄ってきたりすることも含まれているの、か……!?

 それともノックスの基準ではその程度は誤差なのか!?


 うーん、いまいちこの人たちの生態が理解できないんだよなあ……私の知っている常識とは異なる世界線で生きている人たちだからさア……。


「すでにご存知かと思いますがノックスに王はおらず、統治は各派閥の長が話し合いによって行っておりますじゃ」


 かつては力こそ全てという理念の元、秩序などない土地で生き抜くための純粋な暴力こそが最も強い権力だった。

 けれど規模が大きくなり、それぞれが徒党を組めば当然互いに負う損害は大きくなり、消耗すれば当然それは自分たちの弱点ともなった。


 そこでノックスでも実力のある集団が同盟関係を結んだことで、他の勢力を退けたことが今の統治に繋がったとフェイさんは教えてくれた。

 本当の話か確認しようとエルヴェに視線を向けたら彼も『へ~そうなんだ、興味なかったから知らなかった!』と朗らか笑顔を……うん。


「……そもそもノックスは他国からの流れ者、行き場のない人間の寄せ集め……秩序など生まれようもない。儂らとて表向き(・・・)争いを激化してよそにつけいる隙を与えたくないだけじゃからの」


 ホホホ、とこちらも朗らかに笑うフェイさん。

 うーん……ノックスの人たちってどうしてこう殺伐としたことを世間話みたいに言うのかなあ!!


「我らは互いに利用し、利用し合う間柄。今は均衡を保っておりますが、穏やかな水面も石を投じれば波紋が生まれようというもの……」


 長いひげを弄りながら、フェイさんはにこりと微笑んだ。

 本当にその笑顔だけならいい人に見えるんだよなあ……人間って怖い。


「実を申せば、我ら(ロータス)は皇女殿下が聖女であろうが寵児であろうが、我らの領分を侵さなければ構わんのです。椿(カメリア)もこれまでの彼らを思えば、護衛の仕事を請けただけであると考えられる」


「うちの長は『寵児を手に入れてノックスを我が手に……』とかそういうタイプじゃないしねえ」


 あははとエルヴェが笑えば、婚約者候補のみんなはなんかすごく微妙な顔を……。


 いや待って!?

 今更気づいたけどみんなにエルヴェの出自、説明してなかったよね私!?

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