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末っ子皇女は幸せな結婚がお望みです!  作者: 玉響なつめ
第二十章 花は花でも……
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 驚いたことに、私たちを迎え(・・)に来た彼らは……私たちの返答を受け、恭しく頭を下げたかと思うと、普通のルートを通った。

 普通に下山して、怪我人や物々しい雰囲気を放つ神殿周辺を普通に歩いたのだ。


 当然と言えば当然なんだけど、神官服を着た彼らと私たちという組み合わせは別におかしなことではないから変な目を向けられることはない。

 ない……んだけど、ちょっとなあ、変装した神官だって気づいてほしいなって……。


「大丈夫ですよ、ひめさま」


「エルヴェ」


「こいつらの正体がわかって周辺の人たちがいきり立ったところで、また潜伏しているやつらが出てきて制圧されるだけなんで!」


「全然大丈夫じゃなかった」


「まあオレが話をつけておいたので、余計な真似はもうしないと思いますよ~」


「……(ロータス)以外もやっぱりいるってこと?」


「ふふっ、まあそうです」


 私の質問に、エルヴェは楽しそうに笑う。

 いや何が楽しくてそんなにご機嫌なのかな~?


 たくさん暴れられたから、だろうか?

 だとしたらうちの専属執事、バイオレンス……!

 知ってたけど。


「ねえ、護衛騎士のみんなはどこ?」


「あそこで睨んできてますよ~」


 ああ、確かに頭一つどころか二つほど出ている。

 あれはグノーシスたちで間違いない!


(厳しい目を向けているのは、今の状況を把握しているってことなのかな?)


「ひめさまの隊長サンには事情を説明させていただきました。ま、ざっくりとですけど」


「えっ、エルヴェのことも……?」


「陛下から許可はいただいておりますので」


 しれっと言うじゃん、エルヴェ……。

 相変わらず仕事ができるっていうか、どこまで予測していたのかな?

 それとも父様が予測して、準備しておいてくれたってことなのか……。


「あの人たちは善戦していましたよ。ちゃんと捕縛までしていた。足を引っ張ったのは地元住民ですからね」


 フォローしているのか、それとも甘いと指摘しているのか……私にはちょっと判断ができそうになかった。


(もしいざって時は、グノーシスたちなら判断を間違えないんだろうけど……私に判断を委ねられた時、私はちゃんとできるだろうか?)


 聖女としてなら許してやれと言えばいいのかもしれないけど、皇女としても立つと決めた私はその判断が甘さだけではいけないということを理解している。

 理解しているけど、できるかっていうのはまた別問題じゃない?


(……兄様たちなら、ズバッと決断できるだろうに)


 もうちょっとこう、こうだからこう! みたいな、算数のように答えが出る問題ならいいのにね。

 全てがそうだったら逆に怖いけど。

 あれっ、そう思うと世の中って難しいなあ……。


「大丈夫ですよ、ひめさま」


「エルヴェ?」


「事情を話した結果、護衛騎士たちは大人しくしてくれていますから(ロータス)のジジイもそう無茶なことはしてこないと思いますよ。なんだかんだ、恩義とかそういうのに固執する古くさい考えの持ち主なので!」


「褒めるか貶すかどっちかにしなよ?」


「もし何かあっても、他の婚約者候補様たちはともかくオレがひめさまのことだけはお守りしますので!」


「そういう余計な言葉も削ろうか」


 エルヴェの言葉一つ一つにツッコミを入れている場合じゃないとはわかっているんだけど、緊張感がほぐれるのはありがたいなと思う。

 ハッ、もしやこれを狙って……? と思ったけどキョトンとしているエルヴェを見る限り、こいつ本気で言ってるなと思わずにはいられないのだった。


「こちらです」


 そんな私たちが向かったのは、神殿群やその周辺から少し離れた……と言っても徒歩ですぐそこにある、林の中だった。

 そこをもう少し進むと川があって、更に奥には綺麗な湖がある。


 普段なら子供たちや女性陣が木の実や薬草採取に訪れるスポットなんだけど、今は人の気配が殆どしなかった。


 湖に向けて進むとそこに大きなテントが見えてくる。

 前世で見た、グランピングってやつ? に似ている気がする。

 テントの全面が開いていて、その奥にダイニングテーブルやらソファやらバーカウンターみたいなものまであるんだもの。


(な、なんだこれええええええ!?)

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