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末っ子皇女は幸せな結婚がお望みです!  作者: 玉響なつめ
第二十章 花は花でも……
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「でもま、オレからの提案として……会いに行ってみます?」


「えっ?」


 エルヴェの言葉に、私は思わず驚いてしまった。


 ここまでの会話や対応を見る限り、エルヴェは私が行くのをよしとしていなかったのでは?

 目を瞬かせてエルヴェを見ても、彼はニコニコ笑顔のままだ。


「……どうして?」


「今はオレが合流したことで立場が逆転したからですよ、ひめさま」


 私の短い問いに、エルヴェが答える。

 立場が逆転。


 いやまあそうか。

 私は目の前の彼らに誘拐されることもなく、私の婚約者たちは全員が無事。

 そこに加えてエルヴェが加わった。


 一般の人にはわからなくても、ノックスに属する同士、顔見知りとは行かなくてもお互いの存在は知っているのかもしれない。


(私はノックスの勢力図とかはわからないけど、エルヴェが所属する椿(カメリア)は暗殺特化の一団なんだよね。彼ら(ロータス)は商売人……)


 なるほど、私たちが強制的に(・・・・)連れて行かれるのではなく、こちらからご挨拶に行ってあげる(・・・)っていう立ち位置に変わるのか。

 

 あっちはあくまで招待したけど、それが強制だった場合当たり前だけど主導権はあっちが握ることだろう。

 ついさっきまでは拮抗からやや弱い状態だった私と使者たちの関係は、エルヴェが加わったことで大きく動いたのだ。


「……いいわ。そうしましょう!」


 エルヴェの真意まではわからないけど、確かにこのままスルーしたってまた同じことが繰り返されるかもしれない。

 今回はこちらを試す意味合いもあっただろうけど、次に強引な手に出てくる場合はあちらも本気を出してくるであろうことは想像に難くない。


 ってことは、周囲に被害が出る可能性だって大きくなるってことだ。

 それはよくない。よくないぞう!


 私の決意に、婚約者候補たちはそれぞれ顔を見合わせたかと思うとやれやれと言わんばかりに武器を納めた。


「あ、アリアノット様……だ、大丈夫、ですか?」


「僕はアリアノット姫が決めたならそれでいいけど……」


「……度胸がありすぎるのも、心配だな」


「ニア、疲れていない? 俺が抱いて進もうか?」


 うんユベール。

 ちょっとしまんないから止めてね?


 まあ実を言うと状況が落ち着いたら落ち着いたで、安心して膝がちょっぴり笑っているので立っているのがやっとなんだけどさ……。

 襲われるってわかっていても、心構えがあっても、やっぱり実際に経験してみてわかる。


 怖いもんは怖い。


 前もって知らなかったらもっと取り乱していたと思うので、そういう意味ではメディーテー様に感謝だね!

 戻ったらメディーテー様の神殿に行って、お布施しなくっちゃ。

 父様に言ったらとんでもないことになりそうだから、それはそれで釘を刺すことも忘れないでおこう。


「私たち全員をご招待くださるのよね?」


 でも今はやるべきことがある。

 私は私にできることをすべく、皇女らしく――あるいは聖女らしく?


 これまで受けた授業を生かして、優雅に微笑んで見せたのだった。

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