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末っ子皇女は幸せな結婚がお望みです!  作者: 玉響なつめ
第二十章 花は花でも……
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 婚約者候補たちの有能さであっという間に解決――には、ならなかった。


 確かにユベールの魔法もすごいし、フォルティス様の体術と合わせた剣は(ロータス)の人たちに対抗できていた。

 サルトス様は私を安心させるために、自分も怖いだろうに一生懸命笑顔を浮かべて『大丈夫』って声をかけ続けてくれて、サルトス様は時折援護で弓を撃ち、確実に私に男たちが近づかないようにしてくれた。


 けれど、私も、婚約者候補たちも、実戦らしい(・・・)実戦はこれが初めてなのだ。


 ユベールもフォルティス様も経験の一つとして、魔獣狩りに出たことはあるというけど……それは頼りになる経験豊かな騎士たちが一緒だったという安心感があったはずだ。

 サルトス様とピエタス様は護身術を教養の範囲で習った程度と言っていたし、私は言わずもがな箱入りである。

 

 何かあっても助けてもらえる。

 そういう状況下にいた我々五人は、相手を切り伏せることは実力的にできても心理的に難しい。

 そう、何が言いたいかというとだね……ジリ貧ってやつよ!

 相手は荒事に手慣れて、しかも雰囲気的にだけどエルヴェと同じく『もし負けたらそれまで』という……なんていうか命に対する価値観が違ってだね?


 私たちは相手を殺すとか、再起不能にするってことに対してまだ抵抗がある。


(まあ元々私には戦闘系の能力が皆無なんだけども!!)


 つまり何が言いたいかって言うと、こちらは対処できる能力(ちから)が十二分にあるけどトドメを刺す覚悟が持てず防戦一方だ。

 いやもしかしたら彼らは私に血腥(ちなまぐさ)いものを見せないように気を配っているのかもしれないけど。


 実際目の前で人が死んだら、私はショックで倒れちゃうかもしれない。

 今も怖くて震えっぱなしだもん。

 ただの皇女って立場だけならそれでもいい、守られるお姫様ってだけでいい。

 でも聖女として、これからのことを考えたら襲撃一つでいちいち気を失う聖女なんて、求心力がなくなっちゃうじゃないか。


 私への心配と、未来への配慮ってのが可能性としてある……と思うと大変申し訳ないよね!!


 でも相手は違う。

 とにかく私たちを消耗させてしまえば、経験の差で勝てると踏んでいるんだと思う。

 事実その通りで、私たちはじりじりと消耗し、少しずつユベールもフォルティス様小さな傷を負い始めているのだ。


(どうしよう、どうしようどうしようどうしよう)


 魔道具を発動させる?

 でもなんだかよくわかんないけど、この辺り一帯を焦土にしちゃうって言われてるしな!

 破壊の聖女なんて不名誉な二つ名がつくのは避けたいよね、絶対に。


「エルヴェ……」


 まだ戻ってこないの?

 それとも危ない目に遭っているの?


 他のみんなはどうしているのだろう。

 私が大人しくついていけば、こんなことにはならなかった?

 結局みんなを巻き込んで被害を大きくしただけだったらどうしよう。


 そんな考えが頭を過った瞬間、遠くからエルヴェの声が聞こえた。


「お待たせ、オレの(・・・)ひめさま。ご無事でなにより~!」


「エ、エルヴェ!?」


 何故か空から降ってきたエルヴェが刺客を踏みつけてビシッとポーズを決めたことに私は思わず大きな声を上げてしまったのだった。

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