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末っ子皇女は幸せな結婚がお望みです!  作者: 玉響なつめ
第二十章 花は花でも……
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5/25、書籍版「末っ子皇女は幸せな結婚がお望みです!」③巻発売です!

 私たちの前に立ちはだかる六人の神官モドキ(・・・)は、一斉に前屈みで腕をだらりと下に垂らすような姿勢になった。

 長い袖の下で武器を構えているのか、あるいは別の意図があるのか。


 とにかく得体の知れないその場の空気に、私は息を呑んだ。


「姫、下がれ。ピエタスとサルトスから離れるな」


 フォルティス様が剣を構える。

 緊迫した空気に、私は返事をしようにも声が出なかった。


 だって、怖い。

 実際に人間が武器を持って戦う瞬間に立ち会うなんて、私の立場だとそうない話だ。

 といっても、私以外の兄たちはそれぞれ暗殺者やそれこそ公務で戦った経験があるから、それは私が箱入り娘って話なんだけども。


 以前、ユベールのお母さんを助けるために呪いが具現化した犬みたいなヤツに襲われた時も勿論怖かった。

 あの時は本当に怖くて怖くてたまらなかったけど、グノーシスやテト、兄様たちがいてくれた。


 今だって、みんながいてくれる。

 それなのに、なんでか怖さの種類が違うような気がした。


(……目の前にいるのが、人間だから?)


 どちらも誰かを害そうとする悪意には違いがないのに、何故か震えが止まらない。

 ただ、目を逸らしてはいけないと本能的に感じた。


 先に動いたのは、相手のうちの一人だった。

 袖をゆらゆらと動かしたと思った瞬間、ユベールのマントが風もないのに揺れてキィンという高い金属音が聞こえた。

 その直後、後方で音がしたから多分……攻撃されて、ユベールが魔法か何かで弾き飛ばした? んだと、思う?


 なんで疑問形なのかって言われたら、そうじゃないのかなっていう私の推測だからさ!

 聞ける雰囲気じゃないしね!!


 でもその音の後もいくつも弾ける音がして、私の肩は無意識に跳ねていた。

 それを宥めるように、ピエタス様が私を引き寄せてくれたけどさすがにこの状況でときめいたりはしていない。

 というか、できない。


「だ、大丈夫、です……よ、アリアノット様。ぜ、ぜ、絶対、に……お、お守り、します、から……!」


「ピエタス様…」

 

 いつもと変わらない声音。

 本当なら、ピエタス様たちだって怖いだろうに……私が巻き込んでいるってのに、私ばっかり怯えていたら申し訳ない!


 ぺちんと自分の頬を叩く。

 なんのために私も治癒魔法を学んできたんだと改めて自分に言い聞かせて、私はキッと前を向く。


 相変わらず目の前の六人はゆらゆらしているだけで、不気味だ。


「来るぞ」


 フォルティス様が小さく呟いた。

 次の瞬間には激しい剣戟の音が辺りに響き、先程までとは打って変わって奇妙な動きをしながら六人が一斉に躍りかかってくる。


 フォルティス様が剣で応じながら同時に相手を蹴り飛ばし、更にそれをユベールの魔法が炎でなぎ払う。


「こんなものか」


「腕試しをされるのは好きじゃない」


 冷静にそんな言葉を相手に投げかけるフォルティス様とユベール。

 あっという間に相手の第一波を凌いだ二人に、私は目を見張るばかりだった。


 知ってたけど私の婚約者候補、すごすぎなぁい……!?

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