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末っ子皇女は幸せな結婚がお望みです!  作者: 玉響なつめ
第十九章 神様、いました!
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「ちなみに今お話ししてくれているのはどちらの神様で……」


「ああ。人間たちにはメディーテーと呼ばれているよ。君の守護神ということになるのかな? 多くの神々が君を哀れみ、その守護に名乗りを上げたのだけれどね……さっきも話したけれど、本来寵児でもなく、聖人になるほどの徳や修行を積んだわけでもない一般人の君にはどの神とも難しくてね……」


「なんかすみません」


「いやいや、こっちこそごめんね」


 なんか謝罪も釈然としないけど、なんとなく謝ってしまった。

 それに対してメディーテー様も謝ってくれて、それにまた恐縮して謝って、それをまた気遣ってもらって……って、なんだこの謝罪合戦。


「まあいろいろ駆け足で説明させてもらったけど、寵児の血族が皇帝と結婚したことは偶然だったし、その娘である君が寵児でないことも含めて特に神々が意図したものではなかったことは理解してもらいたいんだ」


「はい」


「それでも君が幸せになることを、神々は願っている。寵児たる君のお姉さんが望んでいることでもあるしね。それに、個人的に君が成し遂げたいと思っていることも、応援したいかな」


「はい」


「だからね、聖女ヴィルジニア=アリアノットよ。これから君はメディーテーの子と名乗るといい。先も言った通り神々はこの世界から手を離した存在だ。それでもきっと何かの助けにくらいはなるだろう」


「……ありがとうございます」


「父神たる創造神様ではなくて申し訳ないけれどね」


「いやいや……」


 だって他の神様たちですら私とコンタクト取るのに苦労するってんだから、もっと上の創造神様じゃあ私と会話どころか私の存在を探すのにあちらが苦労してしまうんじゃなかろうか?

 たとえるなら蟻と象くらいの存在感の違いってことでしょ?


 いや、アンテナなんだからそれこそ旧回線と最先端技術の違いか……? 何言ってんだか自分でもわかんなくなってきたな。


「あっ、でも何度も言うようだけど君は一般人だから。神の子と名乗ってこうして一度は繋がりを持ったとしても、君の能力が飛躍的に上がるとかそういうことはないんだ。ごめんね!」


「はい……」


 知ってた! そういうオチが待ってるって、私知ってたよ……。

 ゼロにいくらかけ算したってゼロはゼロだからね!!


「奇跡が起こせないなら聖女だって証拠品を何かいただくとかできませんかね」


「うーん、へこたれないその精神、いいね」


「褒めてもらえるのは嬉しいですけど現実的な話、そういうのがないと私ただの名前だけの聖女で説得力がなくなっちゃうじゃないですか!」


「そうだなあ。あ、じゃあ今後は私の神殿に君が足を踏み入れたら神殿が光るようにするとか」


「すごい参拝客に迷惑!」


「だめ? ええと……そうだな、じゃあ治癒魔法を使うときに音が鳴るとか」


「騒がしい」


「歩いたところに草を生やす……」


「どう考えたって室内で困りますよね?」


 どうしよう、私を守護する神様にポンコツ疑惑出てきたんだけど。

 そんな私の疑念を感じ取ったのか、神様も慌てだした。


「き、君に負担をかけないレベルの奇跡ってなるとなかなか難しいんだよ!? 直接的に力を降り注げないし、怪我をしてもすぐ治るとかそんなのだと逆に狙われるかもしれないし……あっ、待てよそうだよ直接的なのを避ければいいのか」


「何かいいものが!?」


「うんうん、君は勤勉であることが美徳だからそれに合わせて治癒の書を授けるよ」


「治癒の書……?」


「そう。君にしか読めない、君だけの本。そこには古今東西、求める治療法が記されている。技術が追いつくかは別として、救う方法を知ることはできるだろう」


「すごい……!」


「どう活用するかは君次第。使わずに、ただ持っているも良し、医学の発展に貢献するもよし。ただそれを悪用しようとする人間は絶えず現れるだろうし、悩みは尽きないだろうけど……それに対して答えを求めていくのも、大事なことだからね」


 まあ、そりゃそうか。

 本という知識を得てもそれを広めることが本当に正しいのか、信じてもらえるのか、あるいは材料が現存しないものかもしれないし……それなら変に希望を抱かせないでほしかったと思われるかもしれない。


 その事実を知って、私自身が口を噤むと決めても知っていて行動を起こせなかったと後悔するかもしれない。


 選択肢の分だけ満足と後悔が存在するなら……私はきっと一生悩み続けるんだろう。

 天才ならよかった、チートがあればって今も思い悩むのと同じ。

 人の欲には際限がないのだから。


「大丈夫。この世界だけじゃなくても、君はいつだって独りじゃなかっただろう?」


「……はい」


 そう、私はいつだって人に助けられてきた。

 きっとこれからもそうだ。


 だから後悔は、やるだけやってからにしよう。

 私を信じてくれる人たちのために。

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