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末っ子皇女は幸せな結婚がお望みです!  作者: 玉響なつめ
第十九章 神様、いました!

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 本来の愛し子は、姉さん(・・・)だった。

 そのことに、雷に打たれたかのように衝撃を受ける。

 

「この世界で愛し子たちは、辛い思いばかりをするようになってしまっただろう? 昔は誰だってみんなおしゃべりできる愛し子だったのにね。みんな、欲をかいて声を聞く耳を失ってしまった」


 そんな世界に愛し子をまた巡らせていいものか?

 神々の間でそんな論争が起きたけど、人間に限らず〝生き物〟の魂っていうのは循環させないと死んでしまうものらしい。


 このままでは愛し子の魂は地上に降りて傷ついて輝きを失うのが先か、留めたせいで輝きを失うのが先か……って状態だったことから『そうだ、異世界でしばらく巡らせておけばいい!』ってなったんだそうだ。


(なんでそうなった!!)


 とはいえ異世界の魂を捻じ込む? のはさすがの神様たちでも問題がいろいろあったらしくて、姉さんは大前提として幸せになるけど、それなりに苦労しなければならない……みたいな条件が課せられたんだと。


 それがあの姉にとっては過干渉だった毒親ってわけね!

 で、私は単純にあの毒親夫婦の元に生まれた不幸な子だったっていう……。


「これは予期せぬ出来事だったんだけど、愛し子の苦労を引き受ける役割……君らで言うところの守人か。それをどうやら無意識に妹の君が負っていたらしくてね」


「ええ……」


 寵児としての影響……つまり周りを幸せにする影響力は、異世界だから及ばない。

 だけど異世界だからこそ、寵児として守られていた影響で周囲が姉さんの苦労を肩代わりすることになってしまったと。


「……それが私だったんですか」


「そう、身近な存在として、受け皿になってしまった」


 それは神様たちが望んでそうしたものではなかったし、姉さんも望んでやったことじゃなかった。

 でもそう言われたからって、あの日々がなかったことにできるかっていうとそうじゃない。


 どうしていいかわからない、もよもよとした気持ちが私の中で渦巻く。


「夢で見たろう。あちらの世界で、あの子はたくさん後悔しながらたくさん泣いていた」


「……はい」


「我々も、愛し子を守るために他者を巻き込んでしまったことに罪悪感があってね。それでこの世界に呼ぶことにしたんだ」


 あちらの世界では影響を及ぼせないからね!

 そんな風に笑って言われたところで、私はどんな表情したらいいんだろうね!?


「裕福で君を守ってくれそうな人間のところに生まれるようにしたけど、誤算だったのは君があまりにも弱かったってこと。魂が疲弊していたのせいなのか、あるいは異世界を渡ることになったからなのか……前世の記憶を残すことで他者より有利に生きられるようにはしてみたけど、あまり活用されている感じでもないし」


「だって私あちらの世界では子供同然でしたし!?」


 知識チートできるほど頭が良かったわけでも、才能があったわけでもないし!?

 むしろあの悪環境で性根が曲がらず生きてきたことをまず褒めてくれないかなあ!?


 そりゃ物語にあるような転生知識チート使えたらかっこいいなとは思うけど!

 無茶言わんでください!!


「ああー……えっと、そうか、そうだよねえ。ごめん」


「……いや、謝られるともう私どうしたらいいかわかんないです……」


 もし姉さんがいなかったら、私があの過干渉の対象になっていたんだろうか。

 それともあの毒親のことだから変わらず私は道具のように扱われていたかもしれない。


 そう考えれば、決して悪いことじゃなかった。

 綺麗な姉さんを見るのは、羨ましい気持ちもあったけど……ちょっと自慢だったし。

 私があの毒親たちに虐げられている時、助けをくれたのも姉さんだった。


 私たち姉妹の関係は、とても複雑だったことは事実だ。

 それでも、今思えば……嫌いじゃなかった。それでいい。


「姉さんは、あちらで幸せになれていますか?」


「まだ時々君のことを思い出して泣いているよ。もっと早くに手を差し伸べていたら、あの親たちと戦っていたら、君を失うことにならなかったんじゃないかと後悔し続けている」


「……」


「でも、前を向いて暮らしている。今は子育てでてんやわんやしているよ」


「……そう、ですか。良かった……」


 偽らざる本心だ。

 お互いあの毒親たちから逃げて幸せに……いや、私の場合逃げたっていうか転生だからこれどうなんだ? でも記憶あるしなあ。


「まあ、話を戻すんだけど」


「あ、はい」


「さっきも言った通り、君をこの世界に生まれ変わらせたのはこちらの都合というか、罪滅ぼしだ。だからね、君に望んでいることなんて特にない」


「はい。……はい?」


「ただ厄介そうなことになっているし、君がいろいろ考えて名分があった方が役立つならってことでここに呼んだんだ。面白そうだしね!」


 面白そうだしね。

 多分、そこが一番強い気がした。


(……この花、摘み取ったら相手にダメージいかないかな)


「えっ、何。ちょっと沈黙が怖いんだけど!?」

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突如始まる花占い いちま〜い、にまぁ〜い…
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