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末っ子皇女は幸せな結婚がお望みです!  作者: 玉響なつめ
第十八章 聖女認定、頑張ります!
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『 来たれ、神の子。我は山で待っている。疾く、来い 』


 ペルティナさんが告げたその言葉は、ペルティナさんの声ではなかった。

 それはその場にいた全員がそう思ったのだから、間違いない。


 彼女はそれだけ言うと途端に気を失ってしまい、私たちはもう話し合いどころではなくなってしまった。

 私はデリアと共に自分たちの部屋へ戻るよう言われ、その後は食事も運ばれてきて一切外に出ることができず、結局何があったのかを知ったのは翌日のことだ。


「どうやら、ペルティナを通じて神が御自らお声を届けられたようで」


「どうして神だと断定できたのですか?」


「山で待っている、そのお言葉が決定打かと。我らがこの山の麓に居を構えたのは、この山こそが神聖なる土地だからです」


「それは存じておりますが……」


 元々ここは世界の始まりと言われる山なのだ。

 実際のところはどうか知らんけど。


 創世記とか神話によると、この聖なる山――名前はいろいろあるみたいだけど、帝国ではソラム山と呼ばれているその山は創造神が最初に足をついたところ、らしい。

 この世界が生まれた当初、空と大地しかなかった。まだ何もかもが平坦で、海も川もなかったのだという。

 そして神は地上に降り立ち、平坦だった土地を隆起させ、てっぺんから世界を(・・・)見渡して水を与え、そこから海が、川ができて草木が生い茂り生き物が誕生したと。

 まあ要約するとこんな感じ!


 で、オディナルさんが補足するように説明してくれたことによると、この山には確かに神の痕跡があるのだそうだ。

 だから信仰に厚い人たちがこの地に住むことは当然の成り行きだったのかもしれないけど同時に無闇矢鱈と足を踏み入れると不興を買うんだとか。

 そのせいで人の世に災厄が訪れるかもしれないため、神殿を建立して修行の場とすることで人の出入りを見張る役割も果たせるし神の御許にいられるしの一石二鳥ってわけ。


「かつての神官たちの中には神のお声を聞く者も多かったと伝え聞いております。ペルティナがそれに該当するとは思えませんので、おそらく神は皇女殿下を神子としてすでにお認めになっておられるのでは……と」


「なる……ほど?」


「いや実は皇女殿下がお部屋に戻られた後、どうやらまだ伝えたいことがあったのにペルティナが気を失ってしまったためなのか……神託が神像に刻まれまして」


「ええ!?」


「いやはや、早くにお話ししたかったのですが、神殿内も騒がしくなっておりまして……」


 汗をふきふき、オディナルさんったらまるで中間管理職のクレーム対処責任者みたいな感じになっているんだけど……いや私にはまったく関係ないってわけじゃないからこまっちゃうな!?

 

 えっ、神殿が聖女認定したらそれで終わりじゃないの。

 そのつもりで精進潔斎したり掃除したり写経したりして過ごしていたんだけども。


「元々この精進潔斎の後、皇女殿下には山の中腹にある社まで足を運んでいただき、そこで通例通り儀式の終了とする予定でございました。ですが神のお声が届いたと言うことは、山頂にある祠まで足を運んでいただきたく……」


「さんちょう!?」


 えっ、中腹から一気に山頂に難易度が上がったよ!?

 私ってば皇女として大事に大事に育てられすぎて、最近フォルティス様に付き合ってもらって運動をするようになったおかげでようやく基礎体力がついてきたかなってレベルなんだけど。

 いや、皇女としてダンスだの乗馬だのやっているから運動そのものはしているけどさあ。


 山登りってまた別の話だよね!?


 ただ山頂の祠で不躾な振る舞いや無遠慮な願い事、祠を壊そうとするような行動をした人たちがいるっていうから……どこの世界でもやらかす人っているんだなあって思った。


「神託により、皇女殿下の随伴として山に登るのは婚約者候補の方々と、それと皇女殿下が連れてきた護衛より一人選び山頂へ来るように、とのことでございました」


 んんん?

 超、具体的だね……神様!


 神様って、見てるんだなあ。

 なんとなく、私はそんなことを考えながら窓の外に広がる山を見上げたのだった。

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