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末っ子皇女は幸せな結婚がお望みです!  作者: 玉響なつめ
第十八章 聖女認定、頑張ります!
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 場所が変わったら、他にすることができたら、環境に慣れるために必死になったら……それはもう疲れてよく眠れることだろうと思う。

 確かに早朝から起きて薄い神官服? 神子服? に身を包んでお祈りや掃除といった、普段皇女としてはやらないことを繰り返すと体はとても疲れるのでその通りだ。


 でも夜は夜で早いうちから休ませてもらえることを考えればそのうち順応するだろうし、そこは大した問題じゃない。

 そもそも私は生粋のお姫様ではあるものの、前世の記憶のおかげで雑草根性が身についているので別に雑巾がけなんかに忌避感もないし、なんで私が……っていう感じの気持ちもない。

 むしろ元々みんなが綺麗に使っているところを普通に掃除するだけなので、ごくごく当たり前のことを体験させてもらっているくらいの気持ちで日々感謝だよ!


「……皇女殿下、日に日におやつれですがそんなにも神殿での生活が苦なのですか?」


「あー、コレは違うんですよ……」


 ペルティナさんに咎められて、私は慌てて手を振る。

 今日は神殿の庭を掃き掃除。見るがいい、この華麗なホウキ捌きを!!


 なーんて冗談も言えないくらい、疲れた顔をしているんだろうなって自覚はある。

 態度には出していないと思うのよ。

 これでも表情管理は皇族として必須項目で学んでいるからね!

 とはいえ身嗜みだけでは誤魔化せない隈が……ね。


 それもこれも、前世の姉の夢がここに来てもまだ続いているせいなんだよね!!


「少し前から夢見があまりよくない日が続いていて……」


 毎日じゃないからやり過ごせていたあの夢が、最近頻発しているんだよね。

 寝たら前世の姉が嘆く姿を見るとか、それが前世の私の最期を聞いて泣き崩れるとか後悔の言葉が続くとか……やっぱねえ。


 ストレスを感じるなって方が無理でしょ!?


 ただまあ、やっぱり前世云々の話もできるはずもなく『夢見が悪い』と言葉を濁すしかない私にペルティナさんはつまらなそうに鼻を鳴らした。


「信心が足りないからそのように弱い心になるのですよ」


「んんん?」


 ストレスで疲れているからか、今日はペルティナさんの言葉がやけに胸に突き刺さる。

 それにしょげかえるというよりも、私はむかっと来てしまった。


 でもそんな私に気がつく様子もなく、ペルティナさんはむしろ偉そうな態度で言葉を続ける。


「権力にしがみつき、聖女として本来あるべき姿に向き合わない皇女殿下に神が罰を与えているのかもしれませんよ。今日のお祈りはより一層真剣に……」


「ちょっと待ってよ、私はいつだって真剣だわ!」


 掃除だってやっているし、食事だって文句は言わない。

 神様を信じているのかって問われると難しいけど……でもだからって否定をするつもりはないし、小さな幸せでいいから、神様がみんなに優しくしてくれたらいいなと思ってお祈りは続けている。


「そもそも聖女に認定してきたのはヴァノ聖国であって、私から聖女になりたいなんて言っていないのにそんなことを言われる筋合いはないわ!」


「まあ! なんてことを……認められることがどれほど栄誉なことだと……!!」


「皇女がただ遊んでいるだけなんて思わないで! 神に祈る前に人は人を幸せにするための努力をするの。私たち皇族は民のためによりよい暮らしを送れるよう施策を行い、その上で神を尊重しているわ!」


「祈りを軽視なさるのですか!!」


「そんなこと言ってないでしょ!?」


 自分でも感情的になっていると思うけど、前世の姉の嘆く姿に参っていた私はよっぽど疲れていたんじゃなかろうか。


「祈りも! 人としてやるべきことも! やろうとして何が悪いって言うのよー!!」


 思わず皇女としてのお淑やかさだとか、聖女になるんだからここは私が大人になって我慢しなくちゃとか、そんなことを一切合切ぶっちぎって私はホウキを片手に叫んでいたのだった。

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