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末っ子皇女は幸せな結婚がお望みです!  作者: 玉響なつめ
第十七章 自立した大人って、なにかな?
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 私は婚約者候補の四人を見た。

 彼らは驚いた様子のまま、私を凝視している。


 当たり前のように私の意見を受け入れた家族を、そしてこの世界の価値観で言えば突拍子もないことを言い出した私のことも、彼らの目にはどんな風に映っているのだろう。


 この世界で聖女や聖人と言った人間は俗世から離れ、神にのみ仕える存在であるべき(・・・・)とされている。

 そうしなければ、権力と宗教が結びついて良い効果だけでなく悪い効果もあるからだと歴史から学んだ。

 癒着、戦争、弾圧……そういったことが起きないために、そして聖人たちが利用されて本来救われるべき人々が救われない道を辿らないために。

 

 それなのに、私は皇女としての特権を手放すことなく聖女を名乗ろうとしている。


(……たとえ私が神殿の奥地に閉じ込められても、どこかで争いは起きている)


 きっとこれは、常に人の良心に問い続けなければならない問題なのだろう。

 本来ならば、きっと切り離した方が楽なのだ。

 少なくともそう大勢が思ったからこそ、その方式を取っているのだと私だって理解しているけど……私は、何もかもを諦めたくない。


「私が聖女になることで……迷惑をたくさんかけると思う。謂れのない(そし)りを受けるかもしれない。けれど私はこの権力をもって聖女としてできることをしたいと思うし、聖女として祭り上げられるのではなく一人の人間としての幸せも掴みたい」


 言っちゃえば、トッピング全部盛りカレーみたいなね! 違うか!!

 

 でも私はそれを独り占めしたいわけじゃない。

 お持ち帰りして、みんなで楽しみたいのだ。


「理解できないと思われても仕方ないし、急にこんなこと言い出して驚かせてしまったとも思うけれど……」


「とりあえず、皇女のままってことは婚約者候補としてそのままニアの傍にいていいってことで合ってるか?」


「え? ええ」


「なら俺は気にしない」


 ユベール、気にするところはそこなのかな!?

 いやまあ私の婚約者候補なんだから、聖女として清い身であり続けなくちゃとかそういうことになると彼らからしたら根底が覆るわけだしね? そりゃ気になるか……。


「俺の望みはニアの隣だ。その座を手にできる可能性があるなら、それでいい」


 ふっと嬉しそうにそんな発言をするユベールに、思わず乾いた笑いが出そうだ。

 どうしよう、幼馴染み(?)が変な方向に進化しちゃってある意味ブレない発言になっている……ってこれかエルヴェの言ってたの!!


 私同様ユベールに対してなんとも言えない目を向けていた他の三人も、顔を見合わせてから苦笑している。

 やっぱりちょっとなんか……ほら、アレだよね……? 私だけが感じたわけじゃないよね……!?


「まあ、これからも変わらずってことでよろしく」


「サルトス様……」


「ぼ、ぼ、ぼくも! 頑張ります!!」


「ピエタス様」


「おれたちは変わらず、姫のお役に立てるように努力するだけだ。そういうことだろう?」


「フォルティス様……」


 えっ、自分がやったことだけど君たちそれでいいのか。

 もし万が一周囲が受け入れられなくて私が悪女な聖女とか言われたらその夫、もしくは尻に敷かれた男たちって言われちゃうんだけど?

 わかってる? 本当にわかってる!?


 みんなが好意的に受け入れてくれたのは嬉しいけど、なんだか逆に心配になってきちゃったよ……!

 あれっ、私冴えてたんじゃなくて何か変な失敗してないよな……!?


 だけどもう後戻りはできない。

 オルクス兄様とアル兄様、パル兄様が聖女就任の声明について伯父様と協議を始めちゃってるし、何故か父様とヴェル兄様が地図を広げてパレードのルートがとか言い出してるし!

 これはもう後には引けないってやつでしょ!


 いいよ! いっちょやったるよ!!


「って、パレードはいらなぁぁぁぁい!!」

これにて第三部終了です。

引き続き第四部をお楽しみいただきたいと思いますが、少々お時間空いてからの連載となります。

お待ちいただければ幸いです。

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