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そう、私は思いついたのだ。
ツィットリア家の〝聖女〟は自覚なしのチート……って言っていいのかはわからないけど、周囲に幸せを運ぶ? なんていうか座敷童的な? 存在なので、権力者たちに搾取されることや、暗殺を避けるために隠され続けてきた。
ついでに言うとその聖女が酷い目に遭って神々に見放されるのでは? という恐れもあったんじゃないかと言う話だけども……。
ツィットリア家についての研究書? みたいなことをしていた一族の人も過去にはいたらしく、それを譲り受けてなんとか読んでみたところとりあえずわかっていることはほとんどなかった。
幸せにしてくれるって言っても本当に聖女と思われる人が生きている間は大災害がなかったとか、豊作が続いて実りが安定していたとか、その時在籍していた国の王家も子宝に恵まれていたとか……。
いやもう偶然では? ってことも含めて聖女の恩恵なのかどうかわからんのよ、ほんと。
こう目に見えて奇跡! ってのが起きてくれたらみんな楽なのにね!!
まあだからこそ、ツィットリア家の〝聖女〟が本物の聖女かどうかなんて長期間見て『そうかも……?』程度だから神殿で聖女として祭り上げるわけにもいかず、縛り付けて自由を奪えば神の怒りを買うかもしれない……なんて感じに思ったんだろうけど。
「どうしたのだ、ニア。このような夜更けに……しっかり寝ないと背が伸びぬぞ?」
「そうだぞ、話があるなら明日一番でも別に」
私はエルヴェに頼んで父様と兄様たち、それから婚約者候補の四人、それからマルティレス神父様を集めてもらっていた。
そして気合いを入れるため、もう寝るところだったパジャマ姿からかっちりドレス姿へと大変身をして私も満を持して登場ってワケよ!!
……まあ、父様のしっかり寝ないと背が伸びない発言に関しては一理あるので格好がつかないなと思っても何も言い返せないんだけど。
確かにヴェル兄様が言うように、明日の朝一番でも良かったんじゃないかと自分でも今更ながらに思ったんだけど!
でもその場の勢いってあるじゃない!!
「いいえ、心に決めたことは早めにお知らせして、相談したいと思ったものですから」
「ニア、何か困ったことでもあった?」
心配そうに私の傍に寄るユベール。
それに対してソレイユが軽く威嚇していたけど、ユベールはどこ吹く風だ。
「そうじゃないの。私、いろいろと考えて……」
冴えているって思ったけど、これでいいのか?
いやいや、ある程度方針を決めたらそれこそ相談で間違っていないはずだ。
私はぐっと自分の不安を抑え込むように、胸元に手を押しあててみんなのことを見た。
誰も彼もが心配そうに私を見ている。
(この人たちは、ちゃんと話を聞いてくれる)
子供の馬鹿な発言だって笑って取り合わないなんてことはない。
何もできないくせにって嘲笑ったりなんかしない。
あの人たちなんかとは違う。
そして、私もあの頃の私じゃない。
(そうよ、一晩経ったらまたグズグズ考えちゃうかもしれない。それならなんでもいいから前に進む一手を決めるの)
失敗したって大丈夫。
だって私には頼れる家族と、友だちがいるんだから。
「私……私、聖女の名を戴こうと思います!」
続刊決定いたしました!
引き続き書籍版もお楽しみいただけたら幸いです°˖✧◝(⁰▿⁰)◜✧˖°




