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末っ子皇女は幸せな結婚がお望みです!  作者: 玉響なつめ
第十七章 自立した大人って、なにかな?
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 あの後、グノーシスには焦るなと念を押され、テトには優しい目で見つめられるという状況になって私は一旦考えるのを止めた。


 いや、止めたっていうのは正しくはなくて。

 私が〝頑張っている〟と周囲が……少なくとも私が生まれてからずっと近くで見守ってくれていたグノーシスが言うんだから、そこは疑っちゃいけないなと思ったのだ。


 私が知るグノーシスは、忠誠心に厚い立派な武人で、確かに幼い私を大事に大事に守ってくれてきたし余計なことは言わない人だ。

 でも父様や兄様たちと違う視点で私を見守ってきてくれた人でもある。


 別に父様や兄様たちが私のことを『頑張っている』って言ってくれたとしても、それを嘘だとかは思わないよ!

 ただまあ、あの人たちは末っ子の私に甘いどころか激甘なので、何しても頑張っているって言われそうでさ。

 もっとこう……第三者的視点での言葉はもっと信じられるっていうか。


 いや違うな。

 私は〝家族以外〟の人に認められたかったんだと思う。

 今の(・・)家族は絶対に私を見捨てないって、そんな自信があるから。


(……そもそも私はなんで自立した大人になりたかったんだっけ)


 前世の感覚もあるし、働いて一人前になりたかった。

 第七皇女なんて今は立派な立場をもらっていても、結局いつかは外に出なくちゃならないなら自分の足で立ってこそって……。


 でもそれは、あくまで今世も家族に恵まれないからだと思っていたからで……。


(じゃあなんで私はこんなに意地になってるんだろ)


 周りの人に聞いてどうにかなるのかって言われたら、そんなことないってわかっている。

 だって『自立した大人ってなあに?』って周りに聞いたって、そりゃ自分を養えるように頑張っている人って答えになるよね!

 十分わかってんじゃん、私。


 それなのに、なんで周りに聞いたのか。

 わかんなくなった、なんて思ってたけど……グノーシスたちと話して、頑張っているって繰り返し言ってもらえたことが素直に嬉しかった。


 嬉しくて、ほっとしたのだ。


「私ってずるいなあ……どうしよ、ソレイユ」


「キュゥーウ?」


「私、ただ安心したかったんだなあ。頑張ってるよって言われたかったんだ」


 父様や兄様たちを信じている。

 私が乗り越えられない試練を与えることもないし、私が努力をしていることを認めた上で導いてくれる人たちだってわかっている。

 でも心のどこかで、がっかりされたくないって思っているから相談できなかった。


 周りの人たちに聞いたのは、もしそうだったとしても父様や兄様たちに比べて受けるダメージが少ないだろうなって思うのと……皇女だから、きっと思っていたとしてもそんなことを口に出さないだろうっていう打算が私の中にあったんだ。


 一つ気づいてしまえばどんどん自分のずるくて浅い考えを理解して、気分は落ち込む一方だ。


(そもそも、私が自立したいって固執しているのだって……前世の家族を見返してやりたいって気持ちがあるからだ)


 もう顔も覚えていない連中のために、未だにこの心の中に燻る悔しい気持ちが私を突き動かして焦らせる。

 だって私は、ようやく……ようやく逃げ出して、自立して幸せを手に入れるんだって思ったところでそれを奪われたのだ。


 だから今度こそって想いが強すぎたんだろうと思う。

 そのせいで今の私(・・・)の気持ちを、自分が一番理解してあげなきゃいけなかった私自身を急かすばかりで大事にできていなかったんだと思う。


「ああー、もう!」


 悔しいなあ悔しいなあ!

 あんなくそったれな両親のことなんて忘れて当然なくらい今幸せだっていうのに!!


 恋や結婚、お仕事だって思いのままの人生だってのに、過去のトラウマや聖女だのなんだの……次から次へまったくもう!!


「……ん? 待てよ、聖女……?」


 ふと私は閃いた。

 そう、閃いてしまったのだ。


「デリア! エルヴェ! ちょっときてー!!」


 やっば!

 私ってば冴えてるかもォ!!

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