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末っ子皇女は幸せな結婚がお望みです!  作者: 玉響なつめ
第十五章 ツィットリア
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 非公認の国とも言える犯罪国家(?)には、常にいくつかの大きな勢力があって、その勢力が均衡しているらしい。

 そしてその代表者たちによってある程度の方針が定められて、売り上げだの秩序だのが保たれているんだとか……。

 えっ、物騒。

 

 今代は四つの犯罪者組織のトップが仕切っているらしいんだけど、寵児を手に入れた者こそが富を得るみたいな話もあるらしく、別にそれを信じているわけじゃないけどその寵児を手に入れたら他の勢力よりも頭一つ上に行けるだろ! みたいな感じらしくてだね?


 私はトロフィーか何かかな!?


「それで、マルティレスは内々にとある組織と取引をした」


「うぇぇ!?」


 今トップを担う四つの組織とはまた別の、実力はあるのに派閥争いを一切しないというその組織――暗殺を生業する彼らは〝カメリア(椿)〟と呼ばれるらしい。

 随分しゃれた名前だと思ったけど暗殺現場に白いカメリアの花を置いていくからついたあだ名なんだそうだ……物騒だった!!


「そやつらと契約を交わし、ニアを守らせる腹づもりだったようでな。神殿という閉鎖された空間の中であれば、いくらでも揉み消しができる上に公務があるわけでもないから守備範囲も狭い」


「ああ……」


 なるほど、そういうこともあったのかあ。

 っていうか揉み消し……もう何かがあること前提……! こわ!!


「あやつなりに考え抜いてのことだそうだ」


「伯父様は対価に何を支払ったんですか……?」


「創造神の聖遺物だそうだ。あやつの持つ権限で譲り渡すこととなった。……何でも今のカメリア当主が敬虔な(・・・)信徒らしくてな」


(暗殺者だけど敬虔な信徒……と言いつつやってることは裏取引ぃ!)


 なんだろう、なんかいろいろと突っ込みたいけど正義のあり方ってみんな自由だしな……。

 複雑なこの気持ち……。


「それで、事情も変わったが危険であることに違いはない。お前に護衛騎士がついているとはいえ、あの連中のやり方はあの連中にしか分からんこともあるだろう」


 そこで父様がスッと手を挙げると、そこにいつからいたのかわからないけど私とさほど年齢が違わない少年が現れた。

 燕尾服を着たその子はにっこりと貼り付けたような笑みを浮かべている。


「雇われたカメリアの一人だ。これより五年、ニアの護衛としてつく。表向きは執事だが、気に入るようであれば婚約者にしても構わん」


「私が構いますよ!?」


 これ以上増やしてくれるな! しかも厄介そうな人を!!


 思わずそう力説すれば、執事服を着た彼は私を見てにんまりと笑みを深める。

 今度のそれは貼り付けたようなものではないけど、粘っこい感じで……あっ、なんかコワイ。


「面白そうなお姫様でよかった。護衛なんて退屈だなあと思ってたんだ」


「……そ、そう……」


「俺に名前はないから好きにお姫様がつけてよ。カメリアは雇われている間は主人に絶対を誓う。契約のための名前だ」


 名前、名前をつけるねえ。

 あんまり得意じゃないんだよなあ……正直。


 少年執事のことを眺める。

 金茶色をしたアーモンド型の目に薄いピンクの髪をしているのは一見可愛らしく見えるけど……ここに招かれたということは実力者ってことなんだろうし。


(グノーシスたちをかいくぐってやってくる敵を蹴散らすような子ってことでしょ……?)


 にっこにこのその笑顔が怖いんだけどね!?

 私は助けを求めるように父様を見たけれど、父様は「早くつけてやれ」ってまるでペットに名付けしろと言うような態度で頼りにならないし。


 宰相を見たけど、視線を逸らされたよね!!


「……エ、エルヴェなんてどうかしら」


「エルヴェ。創造神の伝説に出てくる、旅人を助ける賢人の名前かあ。悪くないね」


「よ、よろしくねエルヴェ……」


「本日より心からお仕え申し上げます、我が君」


 にんまりと笑う姿は可愛らしい。

 だけど、どこか邪悪なんだよなあ!


 これって婚約者候補のみんなにはどう説明したらいいわけ!?

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