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末っ子皇女は幸せな結婚がお望みです!  作者: 玉響なつめ
第十四章 末っ子皇女、聖女に認定される!?
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 父様から明かされた驚愕の事実。

 マルティレスさんは私にとっての伯父だった……!!


 なんでも、神官になるにあたりご家族の反対を押し切ってのことだったらしく、俗世を完全に捨てるという行動を起こしたらしいのよ。

 で、その後になんやかんやあって私の母親の実家、つまりツィットリア家? が没落することになって、父様はかつての友だちの妹を助けようとして恋に落ちた……と。


(なにそのドラマティックな出会いー!?)


 しかも母様は儚くなってしまった。

 そりゃ娘を溺愛もするってものだよね、納得だよ……!

 単に恋に落ちただけじゃなくて、友だちの妹っていうプラス要素まであったのね!!


「……でも俗世を捨てたのなら、どうして……?」


「それはニアの母、アイナのルーツにある。アイナはそうではなかったが、ツィットリア家はかつて聖女を輩出した家柄だ」


「ええ!?」


「とはいえ、聖女は家柄、血筋、そういったものに頼ることはない。ただ聖女と同じ血が流れていると信奉するものが少なからずいるということだけ念頭に置いておけ」


「は、はい……」


「ツィットリア家は、善良な貴族だった。代々、領地を穏やかに治めていたと聞く。領民にも寄り添い、貴族社会においては珍しく清廉な家であったように余は思う」


「……」


「だが、それは裏を返せば小賢しい連中にいいように扱われることも度々ある、つまり損をしやすい人々でもあったと言えるな」


 善良で、毒にも薬にもならない貴族家。

 だからこそ父様が幼い頃、マルティレスさんが遊び相手に抜擢されたのだという。

 後の側近候補たちは高位貴族たちの令息から選ばれるにしても、貴族家同士の対立を深めるのは望ましくない。

 だが遊び相手は必要だ、ということで白羽の矢が立ったということだった。


 でも、マルティレスさん本人は有能だった。

 だからこそ、いいように扱われる両親も、いいように扱ってくる高位貴族たちも、どちらも嫌いだった。

 幸いにも父様に関しては友人として心開いてくれていたようだったけれども。


「……あやつはあやつで悩んだのだろうな。だが、飛び出していった後に……やつが心配していた通り、ツィットリア家はいいように食い潰されてしまった」


 信頼していた友人に借金を押しつけられて、ツィットリア家は領地を手放すことになる。

 返上したことにより国から得た金銭で借金を返し、過労の果てに……ということらしかった。

 あんまり詳しくは教えてもらえなかったけど、まとめるとそんな感じ。


「ツィットリア家は聖女の家系。だからこそ人々を救う手助けをするのが当たり前と周囲から目されていたことも、彼らにとって『そうしなければいけない』というような重圧を与えていたのかもしれん」


 別に皇帝も、帝室も、そんなことを望んだことは一度としてないそうだけれど。

 でも、周囲がどう思うかはそれぞれの問題だから……。


 私がいくら頑張ったって、兄様たちほどじゃないよねって今だに言われるのと同じだよね。


「おそらく、聖女の面影を押しつけられるくらいならいっそのこと本当に聖女にして、今度こそ手元に置いて守ろうとしているのではないか」


「えっ、迷惑」


 父様がしんみりとそんなことを言ったけど、思わず口からポロリと出てしまった。

 でも母様を重ねられても私は困っちゃうんだよ!


「まあ、一度マルティレスと腰を据えて話をするのがいいかもしれん。余が同席するのが一番かもしれんが……殴り合いになるやもしれんことを考えると」


「皇帝なんだから殴りに行かないで」


「……そなたの婚約者候補たちに委ねてみるか。これもニアを守るための試練と思えば、あやつらもやりがいがあるであろう」


「ええ!?」


「最終的にはどうにもならんかったら余が皇帝の権限でヴァノ聖国に文句を入れるから気にするな」


 そういう問題じゃない。

 そういう問題じゃないんだよ、父様ァ!!


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