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末っ子皇女は幸せな結婚がお望みです!  作者: 玉響なつめ
第二章 至急! 兄たちを籠絡せよ!!
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「ふわあ~モフモフ、モフモフ……」


「ちょ、まっ、ヴィル、ヴィルジニア!?」


「嘘だろ……これ見て可愛いとかどんな感性してんだよ……」


 むっ、失敬な。真っ当な感性ですけど!?

 うわあーアル兄様がふわふわだ……困り顔もまた可愛い。


「怖くねえのかよ、コイツの顔!」


「可愛いです」


「口もこんなにでけえんだぞ!? 牙もあるんだぞ!?」


 むいっとアル兄様の口元を押すようにして牙を見せてくるパル=メラ兄様。

 だけどいいようにされっぱなしのアル兄様は困っているだけだ。


「確かにお口もおっきいですし、牙もあるんですのね。アル兄様、あーんしてください、あーん!」


「あ、あーん……」


「わあ、口の中はこんなになってるんですか! 歯磨き綺麗にできてますねえ!」


「そ、そう……?」


「はい!」


 どうやってるんだろうか、ちょっと気になるところだ。

 ああーそれにしても触り心地がいい~最高~!


 わしわしと撫でているとアル兄様も気持ちいいのか、尻尾が揺れている。

 ふふふ私はこれまでシエルしかモフモフしてこなかったが、前世では動物園の触れ合いコーナーなどで数々の動物たちを魅了してきたモフリストなのだ!

 って嘘ですそんな大したものではないないけど割と喜ばれていました。

 あれっ、これって特技じゃない?


 どこで生かすんだよ!

 ここでか!!


「アル兄様可愛い~」


「……兄としてはとても複雑だけど、ありがとう……?」


 ああそうか、兄様も男の子だもんね。

 可愛いよりカッコイイの方がいいのか。


 そんな私たちのやりとりを見て、パル=メラ兄様は呆気にとられたかと思うと「面白くない!」と大声でそう言って来た時と同様唐突に去って行った。

 なんだったんだあの人。


「嵐みたいなお兄様でしたわねえ」


「僕はヴィルジニアの将来が不安です」


「あらいやだ、どうして?」


「……僕のこの顔を見て恐れないとか、剛毅すぎる。僕みたいな嫌われ者にそんなことを言っていると、変人扱いされてしまうよ?」


「気にいたしませんわ! それにアル兄様が人気者になってしまったら、私がこうして触れられませんもの」


「……ヴィルジニア」


「ねえ、アル兄様。これから私と会う時はもう仮面なんて被らないで。私は兄様のお顔、好きです!」


「……うん。ありがとう」


 その後アル兄様が教えてくれたところによると、兄弟仲というものは良くもなく悪くもなく。

 一部の兄弟同士で会話することはあるが、それぞれの妃の派閥があったりとややこしいので仲良くしづらいところもあるのだとか。


「そもそも、長兄以外にも当たり前だけど皇位継承権がある。男性側に魔力が多いと、出産する側の女性はとても負担があるとされていてね。妃たちはみんな一人しか生めなかったんだ」


「……だから私のお母様は、亡くなったのですか?」


「そうとは言い切れないかな。ヴィルジニア、出産というのはね、とても大仕事で……命がけなんだ」


 言い含めるようにしてアル兄様がそう言うけれど、一応知識としては私も知っていることだ。

 きっと兄様は私が母親を亡くしていることに対して、慰めようと思ってくれているのだろうけれど……正直そこは何も思っていないので、私は咳払いをする。


「つまり、みんな自分の子に権力を集めたいから、祖国の力を借りて争いをしてるんですのね? お兄様たちはそれをあまり嬉しく思っていないのですね?」


「……うちの妹は賢いなあ。そうだよ。少なくとも、長兄と次兄はそう。パル=メラは……僕が嫌いというよりは、第二妃が一方的に第五妃を嫌っていることが理由だと思う」


「どうして?」


「……僕とパル=メラは同じような時期に生まれたからねえ」


 曖昧に笑うアル兄様の仰る意味がわからなくて小首を傾げるが、それ以上は教えてもらえなかった。

 だがすぐにピンとくる。

 嫁いで来た順番が妃たちの順だ。

 それなのに第二妃が子を身ごもったのは、自分より三つも後の第五妃と一緒。


 ある意味で子供を一人ずつしか出産しない妃たちは平等と言えば平等だが、そこには譲れない女の戦いがあるのかもしれない。


(ううーん)


 兄たちの関係もちょっと考えたいところだが、兄の誰かの母上様に私の庇護もお願いしたかったんだけどなあ。

 これはちょっと無理ゲーっぽいな!!


 とりあえずは兄たちと関係を築かないと、やはり後ろ盾のない私は父の権力に頼るほかなくなる。

 次の皇帝とその母親が権力を握ることになるなら、そこまでの間に兄たちとは仲良く、あるいは少なくとも敵意がないと示す程度には関係を築くのが大切だろう。

 そうしないと私の未来がどうなることかわかったもんじゃない。


(適当に嫁がされるとか、嫌がらせのように変なところに嫁がされるとか、そんなん絶対に嫌だ……!!)


 それに後ろ盾が弱いという意味ではアル兄様もそうだ。

 大好きになった兄を守るという意味でもここは私がしっかりしなくては!


(とりあえず、アル兄様は大丈夫。私の味方)


 折角、美幼女に転生したのだ。

 あざといと言われようが何だろうがこの可愛らしさで兄たちを籠絡してくれる!!


次は昼の12時更新です

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