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私から話を聞き終えた三人は「うーん」と小さく唸ってから、三人ともお茶を一口。
それぞれがとても綺麗な所作なので、なるほど、貴婦人というのは一日にしてならず……というのを実感させられる。
いや私も皇女としてね? 幼い頃からきちんと礼儀作法やそのほかもろもろ勉強はしてますのでできているとは思うけどね!?
ただほら、うちの父様を筆頭に、私を甘やかすことに長けた人たちが大勢いるものだから時々心配になっちゃうのよね……。
(アル兄様はそうやって心配できるうちは大丈夫だなんて笑ってたけどさあ、許されるのは今くらいまでだと思うんだよね)
今後は〝大国の皇女〟として幼さを理由にできなくなっていくと思うのだ。
前世の感覚でもの申していいなら私はかなり優等生の部類に入るはずだけど、上には上がいる……というか兄様たちという〝天才〟がいるので、どうしても私がいくら頑張っても『あの兄たちの妹だから』という目で見られていることはわかっている。
前世の記憶があって良かった……と思う反面、それがちょっぴりプレッシャーでもあるわけで。
まあ無い物ねだりしてもしょうがないので、自分にできることを頑張るしかない。
それが一番私にとって得意分野でもあるのでそれはそれで構わないんだけどね、こうして本物のお嬢様たちを前にするとどうしてもこう、キャピキャピした気持ちっていうの?
アイドル見てるみたいな気分っていうかね!
「確かに複数人いると、いざどの方を選べば良いのか……というのは悩ましい話ではありますわよね」
「まあ単純に、必要な要素が何か、っていうのが大事じゃないかしら?」
「でもアリアノット様に必要なもの……そうねえ、皆様まずは身分と容姿の面で基準をクリアしておられるのだから、それ以外……」
なんだ基準って。
さも当たり前みたいに彼女たちが語り出すのを、私はどうしていいかわからず聞いているだけしかできない。
この状態で何か言おうものならそこからまた派生しそうな勢いが三人にあるのだ。
なんていうか、有無を言わせないシゴデキの人たちの雰囲気が……!!
「まず殿方に求めるのだとしたら財を管理する能力ですわね。アリアノット様に陛下や兄皇子様方がお求めなのは、御身に苦労をかけることなく職務を補佐し、肩代わりしてくださる方のことにございましょう」
エレーヌ様の言葉に私はとりあえず頷く。
基本的に父様たちが能力的に彼らに対して望んでいるのはそういうことで間違いないから。
それを受けてリーリア様とカリナ様も頷いた。
「まあ財務官や政務官、諸々そう言った人間を揃えることは大前提。問題はそれらを率いる求心力ある人物であり、アリアノット様だけに心を捧ぐお方でないと」
「そういう意味では武の心得ある御仁は領内の平定に役立つでしょうね。宗教に造詣が深い方がいらっしゃるのも民心に沿いやすいのではないかしら」
「エルフの方や魔国との繋がりがあると領内の交易も捗りそうですものね。であれば確かに彼らは各々条件を満たしているのではなくて? 誰を選んでも問題は起きなさそうですし……であれば、アリアノット様を悩ませるのは彼らの努力が足りないのではないかしら」
「ええっ!?」
とんでもない発言が出たぞ!?
なんだ、努力って!!
「そんなことはないです! 彼らはいつだって私を優先して、優しくって、頼もしくって……私に対して努力を怠るとかそういうことはない、です」
そうだ。
私がただ優柔不断っていうか、恋愛ってものがわかんなくて『いっそ勝手に決めちゃってくれればいいのに』って誰かのせいにできる言い訳があれば悩まなくていいのにとすら思っているというのに。
単に、私がずるいだけだ。
「……アリアノット様は本当にお優しい。あの方々は大前提として選ばれなくて当然なのですわ」
「えっ?」
「勿論、アリアノット様が彼らを見てさしあげなくてはなりませんけれど。恋われて花開くこともございましょう?」
リーリア様がにっこりと微笑んだけど、うん、ちょっと十歳には難しいかな……。
思わず困惑する私に、カリナ様がにっこりと笑う。
「まずは姫に気に入ってもらうために努力をして、横ばいから抜け出す……そのための努力が彼らに求められているのです。アリアノット様はどうやら広く彼らを見ておられるようですが、狩りは待つことも大事でしてよ」
「か、狩り……ですか……!?」
カリナ様、たとえが独特だな……!!




