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末っ子皇女は幸せな結婚がお望みです!  作者: 玉響なつめ
第十一章 なんで? どうして? そうなった!?
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(しっかしそうかあ~……そういうことかあ~)


 例のお妃様たちが急に私に構いだしたのって、婚約者候補に魔国が参戦してきたことが物を言っているに違いない。

 ここであの三人の妃の誰かが私の『母親』ポジションに収まれば、もし彼女たちがそれぞれ推している候補が選ばれなかったとしても発言力は維持できる。


 多分それの発端は、カトリーナ様が派閥の人に言われたからってところだろう。

 カーシャ様はそういうことに興味なさそうだけど、カトリーナ様が動いているから動いておこうくらいの感じじゃないかな。


 カレン様は……わかんないけど。


(まあ三人とも悪い感情はなさそうだし、今のところは私の平穏な日々が少し騒がしくなっただけだから……)


 悪意のない人なんていないし、自分のために動く人は当たり前のことだと思う。


 誰かのために、なんて詭弁だ。

 自分に余裕のある人が、少しだけその余裕の中からできる範囲の善を施してくれるだけ。


 くれないよりずっとマシだけど、だからって百パーセント善意じゃなきゃ嫌だ! なんて我が儘を言うほど私も子供じゃない。

 むしろこんだけ優遇されているお姫様なのに、擦れた考え方していると自分でも思うよ!!


(それよりもあの三人はどう思ったのかな。後から来るユベールと仲良くしてくれるのかな)


 あの三人とユベールの立場はちょっと違うし、最初から一緒だったわけじゃない分お互い上手くやれるだろうか?

 男の子同士だし、そこは上手いことコミュニケーションをとってくれると期待したいけど……。


(それぞれ不満に思っているなら、ちゃんとそれを言葉にしてもらった方がいいのかな)


 候補たちとのコミュニケーションは、何も候補者同士の問題じゃなくて私にも関係することだ。

 父様が複数のお嫁さんをもらったように、いずれはヴェルジエット兄様もそうなるかもしれない。

 そうなった時に複数のお妃様に対して態度を偏らせたらいけないって、臣下になる皇子と皇女はそう習う。


 好き嫌いは別として、皇室を支える存在として目を光らせるために平等であれってことだけど……同じように私は、候補者たちを平等に扱わないといけないんだろう。


 婚約者の選定期間は私と彼らの心を結びつけるためのものだけど、同時に彼らは彼らで、私は私で試されている……と思う。

 何をどう試されているのかはよくわかってないんだけど、父様が執務室で私たちに『考えろ』って言ってくれたのは、成長を期待しての言葉だと私は信じている。


(ニヤニヤしてたのはだめだけどね!)


 私の夢は、幸せな結婚。そして家庭生活。

 怒鳴ったり、誰かを下げて良いように見せたいとか……誰かに責任を押し付けるんじゃなくて、ちゃんと……ちゃんとってなんだかまだわかんないけど、少なくとも家族が泣くことのない家庭を築きたい。


 だけど同時に私は皇女様なんだから、ちゃんと領地を治めて領民のことを考えてくれる夫を選び、協力していかなくてはいけない。


 この二つを両立させなくちゃいけないわけで、そういう意味では後者は今のところ三人とも……どうだろ。まだよくわからない。


(それに、ユベール)


 ユベールが、私の旦那さん?

 今の自分がウェディングドレスを着ている姿を想像しても、肝心のユベールの成長した姿がまったく想像できなくて何も実感できない。


(ユベールが……?)


 覚えているのは、あの別れ際の姿だけ。

 でもきっと今はもっと背が高くなっているはずだ。もしかしたらフォルティス様くらいあるのかも? それはないか。


(だめだ、想像できないや……)


 トモダチだと思っていた人が、婚約者になるかもしれないって言われてまだ戸惑っている。

 あの三人だったら違うのか? って言われたらそれもよくわかんない。


 恋ってなんだろう。政略結婚だから、必要ないんだろうか。

 でも私は恋してみたいって思って、少なくとも『好き』って思える相手が良くて。


 今だって彼らのことも、ユベールのことも『好き』だけど。

 兄様たちに向けている好きとは違うことくらいわかっているけど、それ以上がよくわからない。


 ただ、ちょっとだけ胸が苦しくて、なんだかよくわからないけど恥ずかしくなって私はクッションに顔を埋める。

 私の頭の上で遊んでいたソレイユが不思議そうな声を上げていたけど、私は聞こえないふりをしたのだった。


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