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末っ子皇女は幸せな結婚がお望みです!  作者: 玉響なつめ
第十章 可愛いだけじゃないですけど?
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「……あの」


 そしてそんなフォルティス様のよくわからない宣言? 宣誓? を受けた次の日、今度はびっくりカレン様が私のところにやってきたのだ。

 アル兄様と一緒に。


 アル兄様と一緒にだよ!!


「これはいったい……」


 先触れは、アル兄様だった。

 そして話をしてくれたのもアル兄様。


 カレン様は縮こまっていた。

 まさしく借りてきた猫状態。


 でも私に『会いたい』って言ったのはカレン様だったというのだ。


「ええとね」


 そしてアル兄様は語ってくれた。カレン様の代わりに。


 要約すると、いろんな意味で身代わり(・・・・)にしてごめんなさい、ってことらしかった。


 アル兄様に対しては『自分よりも見下される存在』として。

 フォルティス様に対しては『自分よりも劣る存在』として。

 そして私に対しては『本来自分がすべきことを押し付けた』と自覚した、とのこと。


 つまりカレン様は劣等感の塊で、その劣等感は他の誰か(・・)が自分よりも酷い目……たとえばアル兄様が先祖返りでみんなから目を背けられるとか、そういったことで『自分はこれよりもマシだ』と心を慰めていたという。


 だけど同時にそんな自分を嫌悪していて、ならばいっそ周りと関係を断てば自分の世界だけは守れると……まあそんな感じ。


「どうして急にそんなことを仰るようになったんですか?」


「そ、それは……」


 私の部屋に来て一時間以上、ここまでアル兄様と私とで説明とすりあわせ、解明と来たんだけど……本人から聞きたいじゃない? こういうの。

 

 するとカレン様はようやく顔を上げて、そしてまた俯いてしまった。


「……本当は、お父様が……スペルビアの王は私たち弱者を嫌っているのではなくて、鼓舞したかったのだと……守りたかったのだとわかっているの。でも、怖くて……」


「はい」


 正直めっっっっっちゃ声が小さくて聞き取れないレベルのボソボソ声だったんだけど、咄嗟に風の精霊さんに手伝ってもらって空気壊さない私とても偉いと思うの。

 兄様も耳を多分そばだてて聞いてるレベルよ、ホント!!


 そりゃカトリーナ様にも「話しかけてもあの子何言ってるかわかんないから声かけるのやめたのよ!」とか言われるわ。

 多分返事してるけど通じてないよ! なんて残念な行き違い!!


 まあこういってはなんだけど、カトリーナ様も短気だからそういう意味ではカレン様と相性が悪いんだよね……一応『皇帝に愛される妃』になろうとして他の妃たちと仲良くしようとはしていたみたいだけど、あの性格が災いして失敗に終わってんだから笑えない……。


 それはともかく。


「なのに、アルは今幸せで、フォルティスも……最近、グノーシス様に、一撃入れることができました」


「えっ」


 それすごいことだな!?

 最近わかったんだけど、グノーシスってスペルビアの王様とも本気の対戦ができる貴重な騎士らしいんだよね!

 すごい騎士ってのは知ってたけど、そんなすごい人を赤ん坊の頃から私の護衛につけていたっていう父様の溺愛……えっ、それとも私すごい暗殺されるとか危険な状況にあったのか……? って思ったもん。


 どうやらフォルティス様は充てられている自由時間は騎士隊に混じって訓練しているらしく、特にここ数日はすごい活躍を見せているそうだ。

 

「グノーシス相手に一撃入れるのは他の騎士たちでも難しい。それをウサギの獣人が成功させたということで、フォルティスに向ける周囲の目も随分変わったようだよ」


「そうなんですね……」


 どんな躍進をしたらそんな風になるのやら!?

 まさかと思うが……蹴り……? 蹴りのおかげなの……?


「アルのことも、フォルティスのことも……貴女が、いてくれたからだと、わかって……私よりも弱いと決めつけて、本当なら私が、私がやらなくちゃいけないことを、貴女がやってくれたのだと気づいて、恥ずかしくて……」


「カレン様」


「……フォルティスがあの時、私を見ていたのは、威嚇の、ためで」


 ああ、やっぱりあの時わざわざ聞こえるように話してたんだ!?

 獣人族の聴力、普段からどうなってんだ……こりゃ内緒話もできないね!


「ごめんなさい……! そして、ありがとう……!!」


 ほろほろと涙する猫耳の美女。

 うん、庇護欲がそそられるタイプだわあ。


 私は笑う。努めて、笑顔になってみせた。


「謝罪も感謝も、ありがたく受け取らせていただきます。ですが、カレン様」


「……なあに?」


「これ以上のことは、どうか私にお求めなさいませんように」


 黙ってたら誰かが助けてくれるなんて夢、見ちゃいけないんだ。

 私はそれをよぉく(・・・)知っているから。

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