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となりの世界の放浪者たち  作者: 空閑 睡人
第一章:召喚災害
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5

「いいか、お前はこちらの世界に召喚された。んで、この俺と隷属契約を結んだんだ。その指輪でな」


ルシファーが沙耶の左手の人差し指に嵌った指輪を指差した。あの時は気が付かなかったが、飾りのない銀色のリングには、淡い水色の石が嵌っている。角度によって波のように光が揺れる。まるで海を閉じ込めたようだ。


「これ、ルシファーがくれたの?」

「違う。その指輪は契約式が埋め込まれている。召喚された人間にひとつずつ勝手についている」


沙耶は指輪の石を眺めながら、首を傾げた。


「さっきも言ってたその……契約って何? そもそもここどこ? 召喚って言ってたけど、まさか」

「そのまさかだ。お前たち人間がこの世界に召喚されたんだ。ここはお前たちの住んでた世界とは別の世界だ」


薄々そんな予感はしていた。見るもの全てに違和感しかないここは、あまりにも今まで知っていた世界と違っている。

ならば考えうるのは何か。その選択肢の中のひとつに異世界への召喚は確かに含まれていた。


「つっても完全に別世界ってわけでもないがな。で、ここは人間が単体で生きてけるような世界じゃない。だから人間の代わりに武力となる魔物がつく。それが隷獣で、その契約が隷属契約だ」


ぺらぺらと喋りだすルシファーに沙耶は眉根を寄せる。頭が痛くなりそうだ。


“よ、よくわかんない……。ん、でも隷属ってことはもしかしてレイって奴隷の隷か! それは確かにルシファーからすれば屈辱かもだけど……”


「私そんな契約した覚えないんだけど。というか誰が私を召喚したのさ」

「あー、もう知るか。ここまで懇切丁寧に教えてやっただけでも感謝しろ。いいか、これだけわかってればいい」


ルシファーはそう言うと、沙耶の額に指を突き立てた。


「お前が主で俺がお前の隷獣。俺がお前の代わりに戦う。以上だ」

「え? え? だからえっと……?」


理解が追いつかない沙耶にルシファーは面倒くさそうに手を振ると、その場で踵を返して開けた草原に向かって手を伸ばす。


「これが俺の力だ。見てろ」

「何言って――」


沙耶の言葉はそこで切れた。

息の呑んだ沙耶の目の前で、ルシファーの手の平から炎が燃え上がった。ガソリンが手の平から気化しているわけではもちろんない。何もなかったその手から確かに炎が燃え上がっている。


ルシファーは腕を払うように振った。すると炎はその腕の動きに合わせて、眼前の乾いた草を燃やし尽くした。草々は一瞬で燃え尽き、跡には黒焦げの炎の軌跡だけが無残に残されていた。


「どうだ! まあ、こんなもんは序の口だが――おい、どうした」


沙耶の目の前でそれは起こったのだろう。だが、今の沙耶に草の燃え跡も、自慢げなルシファーの顔も見えてはいない。視界にこそ僅かに掠めはしたが、それに対して反応する余裕など一切なかったのだ。


“なに、これ……!”


沙耶を襲っているのは頭痛に眩暈、そして激しい動悸に息切れ。目の前が霞んでちかちかする。頭の中でガンガンと音が鳴り響き、眩暈でぐらぐらと揺さぶられる。寒気がするのに脂汗が止まらない。苦しさと吐き気でどうにかなってしまいそうだ。


そんな沙耶の様子を最初戸惑うように見ていたルシファーは、「ああ」と何かに気が付くと、ニヤリとほくそ笑んだ。


「ははっ! 魔素の生成が追いついてねえか! まあ、この俺はそこらのやつとはものが違うからな。そもそも人間ごときが生み出せる魔素量でこの俺が使えるわけがねえんだよ」


したり顔でルシファーが何かを言っている。だが今の沙耶に言い返す余裕はない。


“気持ち悪い! 吐きそう! でも、でも! こんな男の前で絶対に醜態を晒したくない!”


今も明らかに体調の悪い人間を前にして、気遣うでもなく、よくわからないことを言っては威張り散らしている。その上嘔吐などした日には何を言われるかわかったものじゃない。

沙耶は必死に耐え続けた。


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