棺の中の吸血鬼、時々探偵になる。
人間の血はその人の人生の味がする。チェリーのように甘酸っぱかったり、ブラックコーヒーのように渋苦かったり。さぁ今日はどんな味の人間がやってくるのか、私は棺の中で赤ワイン色のジャーキーをかじりながら気長に待つとしよう。
コツコツ…キィ
古びた棺の蓋が奇妙な音を立ててゆっくり開く。私には不規則的に点滅を繰り返す電球の光さえもまぶしかった。
「ッ、くっさ。またこの中でジャーキー食べたでしょ」
「ごめんごめん」
関節という関節を伸ばしながら私は体を起こした。
「これ掃除するの僕なんすけど」
「助手になるって言ったのはおまえだろ、んで依頼は?」
「…」
苦笑いをしている口にトビウオのように泳ぐ目、またゼロか。怜人が助手になって一か月、全く依頼人が来なかった。彼は彼なりに学校が終わった後、チラシを配ったりして頑張っているらしいが今のところ努力はまだ報われていない。
「すんません…」
「まぁ、依頼人がいなくても血のストックはあるしね」
怜人をじろりと見ながら言った。
「今日も来なさそうだし、怜人の血でも貰おうかな。一か月飲んでいないから結構おなかペコペコなんだ」
「うっ、」
私は答える時間も与えず腹の上にまたがって押し倒した。右手で口をふさぎ、左の腕で胸を押さえる。私より倍大きい図体で必死に抵抗してもがいている怜人がなんと愛くるしいことだろう。
「いっただっきまぁす」
銀色に輝く鋭い八重歯を彼のたくましい首元にに近づけた。
カランカラン…
久しぶりにお客用の扉のドアベルが鳴った。
よろしくお願いいたします。




