第6話 新築
秋になる頃には、二羽のグリフォンは次第に綿毛が羽毛に生え変わるようになってきた。食糧もよく食べるようになり、何かと羽ばたきを始める。体格もかなり大きくなってきて、宿の部屋ではかなり狭苦しくなってきた。
部屋にいると何かとバサバサ顔を叩かれて、正直言って流石に鬱陶しい・・・。綿毛が舞い散るし。
仕方がないので見回りには連れ歩く。これは早いところ、家を建てないとどうにもならないかもしれない。早めに建築屋に話を通しておこう・・・。
堀割なんてまだ全然で、堀どころか穴でしかないのに。
とはいえ、いくらなんでもピーちゃんキューちゃんを領地に放置できるわけもなく、夜はやっぱり宿に泊めるしかない。
でも、夜中にバサバサ羽ばたかれると、くしゃみが止まらなくて困る・・・。
そうこうして、年明ける頃には堀もかなり堀らしくなり、やむなく畑を耕し出す前に家を建て始めざるを得なくなった。
平地に建てられるので、どうしてもそれほど防御力を高められない。
それでもグリフォンと一緒に眠る、自分の寝室は広めに作らないといけない。何よりも堀から取り除いた土だけで建てた塀はまだ全然低くて、防御力など期待するのも烏滸がましい。まだまだ、掘り下げなくては。
幸いなことに、領地内に井戸が湧いた。これで北側から水を取り込むための水路を切り開いていく必要がなくなった。そこまで工事するとなったら大騒ぎだ。
屋敷の土台には周囲から石を積み上げていく。将来を鑑みて、数頭は飼える厩、練兵場も兼ねた中庭、脱出路も兼ねた奥棟も建てる。
風が冷たくなくなる頃にはグリフォンの飛行訓練を始める。ウェスタヤルト市内では無理だけど、まだ低い塀と浅い堀しかない領地でグリフォンが力強く羽ばたく。
それでもまだ筋力が足らないのだろう、体を浮かすことはまだできない。
「私は、力だけでは飛べないんじゃないかと思うよ」というのは師匠。
「魔道がやっぱり必要?」
「だと思う。もちろんまだまだ筋力不足なのは間違い無いけど、それでもね。
「そう言ったことは多分、本来なら親鳥から教わることなんだと思う、でもね・・・」
「そうだね。この子たちの親はもういない」
「私たちで、この子たちを育てないといけない」
夕方の日が暮れるまで、巡回して、堀を掘って、訓練をして、ヘトヘトになって家路に着く。まだ手付けが払えていないので、屋敷はまだ、土台の石を積み始めたばかり。
半年を過ぎて、秋に拝受した賄いはまだ半分以上残っているが、逆にいえばそれしかない。毎年賄いを使い切ってしまうようでは、先は知れている。
グリフォンが飛べるようになれば、ひょっとしたら、メルさんと組んで狩ができるようになるかもしれない。
期待したいところだけど、どうなんだろう。
「どうなんだろうね」とキューちゃんに問うてみると、「キュークルルル」と啼く。この子たちもずいぶん啼き声のバリエーションが増えた。
賢くて、私のいうことをよく聞くこの子らなならベル師匠と私の指導で魔道が使えるようになるのかもしれないな、と、リーシアは思う。
それはグリフォンに魔道という新しい武器を見つけさせることなのかもしれない。




