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第45話 巡回

また曲がりくねった通路を経て門外に出ると、直前にある堅固そうな建物を詰所だと紹介された。


「ところで」と、攻め込まれた際にこんなややこしい通路で外部に通じるようにしていて、辺境伯の指揮が間に合いそうにないと思ったので、そこを質問してみると、


「外とは隔絶されているのだが、中から内庭、門の上に出ていける秘密の直通路があるのだ」とのことだった。

もっとも、そんなことにならないように、リーシアたちが働けばいいだけのことだけど。


詰所には当然、何人かの騎士・兵がいて、リーシアたちが訪うと、皆立って家令様に敬礼する。この敬礼という動作はリチャード様の屋敷で「戦場での騎士が目上のものに対して、右手の武器を置き、武器を持たない右手でバイザーをあげて顔を見せたこと」が儀礼化したのだと教わった。


当然、リーシアとカルルも先任騎士に敬礼をおこなう。


無人ではない家令様、エーバーハルトさんは敬礼せずに左手を上げて応える。皆で敬礼を下げる。


「ザッ!ザッ!」と揃った音は心地いい。


「本日より勤める正騎士、リーシア・ヴェイツェンドルフ、カルル・ヴェイツェンドルフだ」


「リーシアです」


「カルルですっ!」


と、家令様の紹介に自己紹介をする。


「こちらは騎士格のザオベル様」と、ベル師匠には敬称がつく。

騎士、兵に僅かな動揺が広がる。


「もちろん、塔の魔道士様だ。静かに」

と、どよめきが制される。

「こちらのフィレベルクとメロヴィクは兵士格になる。リーシア、カルルと異なり御屋方様の直臣ではないので揉め事は起こさぬように」


と、それぞれ紹介される。


詰所にいた騎士様は二人。年嵩のがっしりした方がイムレ様。まだ若い方がラースさんとのことだ。他に7名の騎士がいるそうで、それぞれが10人前後の兵士を指揮しているのだとのこと。


もちろんこの数は職業兵士だけで、いざとなると住民の中から練兵訓練を行なっているものを抽出して、動員するんだとか・・・。


李書文の世界では戦争で数十万人、数百万人が動員されるということだそうで、考えただけでも眩暈がしそう・・・。それだけの人間に命令を伝えるだけでもおかしくなりそうだ。


ウェスタヤルトでは頑張っても1000人ぐらい出せればいいぐらいかな・・・。


詰所に紹介された後は、ラースさんに引き継ぎされて、市内巡回の指導を受ける。お城の前の広場にある市から始まって、西に向かう。西側の街路は東側同様、曲がりくねっていて、敵の攻撃に備えている。


今日は防壁までは登らずに、市街の巡回だけに止める。西の端にも防壁があるけれど、内側に沿って川が流れ、またその内側にも低く塀がある。ただ、攻撃された時にはこの川が堀として機能して、防御となる。北側には防壁の切れ目があってそこから川が流れ込んでいる。川は二手に分かれていて、片方はこれまで見てきたように街の西側、そしてもう片方は中央に流れている。

これは長い時間をかけて掘ったものかもしれない。


東側はリーシアたちが見てきたように、王都からの玄関口に当たる。一応宿にも挨拶だけはしておいた。後で荷物を引き取らないと。


南側には耕作地が広がっていて、一定の立てこもりにも耐えられるようだ。どうも根菜が多いように見え、作物には馴染みがない。またぐるっと西側に回ってから、広場に戻ると陽がずいぶん傾いていた。


「これで一回りだ。明日から毎日詰所に来て、日を決めて隊ごとに巡回する。巡回しない隊は詰所にいて、事態に備える。詰所には交代で夜番をつく。1隊は交代で城の警備につく。以上が平時の任務になる。

夜間の呼び出しに備えて、宿は広場の近くにすること」


「ラース様のお宿はどちらでしょうか。私もそちらに」


「ああ、自分はウェスタヤルトの生まれで、屋敷というほどではないが、自宅は城のそばにあるんだ。流石にこの人数を養う余裕はない。詰所のそばに、外からの騎士向けに宿があるから、そこに頼むといい。卿等は馬などがあるか。馬屋もあるぞ。流石にグリフォンを厩に入れられないが」


「あ、ああ。馬はまだ。ロバが二頭。それにワゴンがある」


「そうか、ワゴンは売ってしまってもいいかもしれないな。ロバは万一のために飼い続けてもいいかもしれない。農家の中には、欲しがるものも多いかもしれないが」


なるほど。

「一頭は僕のものだけど、農家に貸し出して賃料を取るのもいいかもしれないな」

ベル師匠!冴えてる!


「その考えはなかったな」というのはラースさん。

「まあ、その辺りの処分は好きにするといい」


というので、今日のところは新しい宿に話をつけておいてから宿に戻って、引っ越しをした。



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