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神槍は転生してもやはり神槍を目指す  作者: Scull
第2章

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第44話 ギュンター侯

門扉が開いて真っ暗な門内に入るとすぐに門扉が閉じられたかと思えば、正面の扉が開いた。これはなるほど、防御力が高い構造だ。

外門を突破して一斉に雪崩れ込んだ敵兵が内門で堰き止められ、突撃してくる敵兵によって先鋒が圧殺される。外扉よりもさらに頑丈に作られた内扉がリーシアの怖気を呼ぶ。


王城では居所まではまっすぐだった通路は左右を石壁に囲まれ、折れ曲がっている。所々に矢狭間があり、内扉を突破できても恐ろしい矢の雨が降り頻るのだろう。つい真っ直ぐ行きそうな通りが実は曲がるというところが何箇所もあった。


坂があるので登って見晴らしが良くなるかと思えば、遮るものがない屋根の上で、周囲から狙い放題の場所だった。左右は断ち落とされており、ここも恐ろしい。


屋上を歩き、今度は階段を降りてまた通路を通るとまた扉があった。もうすっかり方向感覚はおかしくなってしまっていたけれど、おそらくはこちらが門からまっすぐに歩けた場合は正面にあったはずの建物のはずだ。


こちらは開けたままだった入り口をくぐり、一段上がった床に上がる。すぐに扉で閉じられた壁に突き当たり、そこの門衛に誰何される。


「ヴェイツェンドルフの王騎士リーシア。ウェスタヤルト辺境伯にお願いがあって罷り越しました」


門衛が頷いて扉を開けると、また壁が立ち塞がり、ぐるっと迂回してようやく広間に出ることができた。天井近くは薄明るくなっていて、どうやってか知らないが、外から光を取り入れているらしい。


跪いて頭を下げ、再び口上を述べる。


「よくぞ参った!王騎士リーシア。顔を上げるがいい」

決して大声ではないけれど、戦場でも遠くまでよく届きそうな声がした。玉座ではないけど、首座には壮年の身なりの立派な男が座っている。両脇には剣が突き立っていて、背後には紋章を描いた盾が掲げられている。紋様は飛びかからんばかりの虎が、黒い地紋の上に金色の板金で描かれている。


「領主のギュンターだ。ウェスタヤルトを王より預かっている。

「して、お主の用向きとはなんだ」


「はい。我々一党、王陛下より騎士位を賜りましたものの領地もなく、今の所糧の当てがございません。つきましては、ギュンター公におかれましては我々一党を槍働にてお仕えする許可をいただけないものかと」


「あいわかった。騎士リーシア、本日より我がウェスタヤルトにて仕えるがよい」


「は、それでは、は・・・?え、お雇いいただけるので?」


「そう申した。委細はこちらにいるエーバーハルトに聞け」


と、隣に立っていたやはり壮年の男性が、ギュンター公に会釈し、こちらを見た。

ぎょろりとした目でリーシアを睨め付け、値踏みする。


「エーバーハルトだ。ウェスタヤルトの諸事を任されている。ついてこい」

「では」

最後の挨拶は辺境伯へおこなったものだ。


エーバーハルトさんについて、広間の脇の控えの間に皆で入る。


「改めてエーバーハルト様にご挨拶申し上げます。ヴェイツェンドルフの騎士リーシア。昨年ミュルクヴィズ騎士として叙任されました」


「うむ」


「同じくヴェイツェンドルフの騎士、カルル」


「うむ」

丁寧に相槌を打っていただけるのが頼もしい。


「自由独立領の魔道士ザオベル。故あってリーシアと行動を共にはしているが、特に主従関係はない」


「うむ!?なんと、あの塔の魔道士か!噂はかねがね。ううむ」

ベル師匠がなんとなく背筋を伸ばしたらしいのが感じられる。


「私は、魔道士ザオベルの従者にして徒弟のフィレベルク。奴隷身分ではありませんが、特段叙任されたこともありません」


「うむ。」


「こちらはロッテンナウの猟師、メロヴィク。我が一党の貴重な射手です」と、メルさんはリーシアの方で紹介しておく。


「そしてこちらが、私のグリフォン。ピコーと、キュリオ」


「うむ、ううむ。話には聞いていたが、本当にグリフォンなのだな」


「ピー!」「キュー!」と、それぞれ挨拶のように鳴く。


「それにとても賢いようだ」


褒められたことがわかったようで、二羽とも声を出さずに口を開けたので、軽く肉片を放り込んであげる。


よしよし。


「さて、貴公らは今後私の指揮する軍の麾下に入っていただく。高名な魔道士であるザオベル殿でも、今後は私の命令があれば従っていただくが、それは構わないだろうか」


「騎士位ではないので、なんでも従うというわけにはいかないけれど、無体なものでなければ従おう。何しろ独立しているので、自分の命が脅かされるのであれば、僕はとっとと離脱させてもらうよ」


「結構です」

エーバーハルトさんはあっさり引き下がった。意外。


「一党の中で二人も叙任されているということなので、戦力としては十分と考える」

ベル師匠がいることで、エーバーハルトさんが喋りにくそうだったので、間に立ってあげる。


「当面は、城下近辺で生活拠点を築き、そこから出仕してもらおう。城の正門前には詰所があるので、そこに基本的に毎朝きてもらう。


「基本的に平時は兵を率いての領内巡回。何か面倒ごとがあれば、詰所に報告して指示を仰ぐこと」


「は」


「戦などの非常時には詰所に来て指示を仰ぐこと。そのほか、何かあれば詰所に報告するように」


「承知いたしました」


「他になければ本日は帰って良い」

というので、大事な質問をしておく。


「申し訳ありませんが、閣下」


「なんだ?」


「わたしたち一党の賄いはいかがいたしましょうか」


「おお。大事な話であるな。我が領地では、基本年払いになる。秋の収穫期に税の徴収があるので、その際に一人につき、金貨を100枚支給しよう。

「もちろん働きが良ければさらに上乗せされる。どうか」


「承りました」

聞いておいてよかった。宿賃と考えても秋にならないとお金が入ってこないんでは戦働きをする前に餓死してしまう。


「それでは、まず、詰所の方に参ります」

と、その場を辞した。



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