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第37話 弦音

「とりあえず、あのグリフォンが上昇していたあたりの近くに巣があるんじゃないかと思うんだけど」と、やつが舞い上がっていた辺りを指差してみる。


「いやいやリーシア。さっきは言いそびれたけど、あそこは単に風が上に上がっていくだけの場所さ」というのが師匠。


「そうなの!?」って驚くメルさん。


「そうさ。ロウソクに火を灯すと炎と煙が上にのぼるだろう。なぜかは知らないけど、温められた風は上に吹くのさ。グリフォンはその上に吹く風を使って空高く飛び上がるようだね」


「へー、そんなもんか」そうみたい。


「すると、グリフィンの巣ってどのあたり?」


「そうだね、少なくともあの風の階段まで飛んでいける、木の上にあるんじゃないかな」


「そうなの」


「グリフォンに天敵がいるとは思えないからね。他の生き物のように、見えない場所に営巣するとは思えない」


「へえ」


「見晴らしのいい斜面で・・・、杉や樅のような木が育ちやすいところ・・・。っと・・・


「あれだ!見つけた。」


なんと。さすが師匠。


師匠の指差す先を見ると、確かにそれらしい木のてっぺんに杉の葉っぱを積んだらしいものが見える。巣にはグリフォンがもう一頭いて、こちらを睨みつけている。


「まずは師匠。このグリフィンを葬ってあげない?

「今回は襲われたから身を守るために討ち取ったけど、別にこいつが憎かったわけじゃないからさ」


「ああ、そうだな」とはカルル。


「わかったよ」


とはいえ、土はそれほど多くはないので、浅く掘ってグリフォンを入れ、どかした石や土をそれっぽく被せておくことしかできなかった。

連れ合いのグリフォンに睨みつけられながらだと尚更だ。


とはいえこれからその連れ合いを討伐しなくちゃいけない。軽く腹ごしらえをしておいてから支度を整えて、また、斜面を斜めに登っていく。


両手を空けておいた方がいい地形になってきたので、盾は腕から外し、剣は剣帯を腰から外してどちらも背負う。


鈍気がめんどくさがって進まない。全くこいつは。


「ほら進め!」ってカルルが鈍気をこづいてる。

「カルル、無茶しすぎて鈍気を谷底に落としたりしないでね・・・」と、釘だけは刺しておく。


「お、おう・・・」って返事を聞くと、カルル、そこまで考えてなかったね・・・。


草がそれなりに生えているから、足元の土が滑ることはそんなにないけれど・・・。こう斜めになった足場では、あまり力を発揮できないかもしれない。


それにしてもここまで近づいているのに、グリフィス側に動きがないのが気になる。気がついていないわけがないと思うんだけど。


「師匠・・・」


「これは僥倖ぎょうこうかもしれないね。抱卵をしていて身動きが取れないんじゃないかな」


なるほど。すると、


「そろそろ俺の出番かな」というのはメルさん。


「師匠、反撃に備えて、体を支えてもらってていい?フィルさんはカルルの支えをお願いできる?」と言って、背中から盾を下ろして左腕につけ、剣も腰に佩く。武器は鈍気から下ろした槍を・・・・。


「いいよ」

という師匠の声を聞くと、

「じゃ...」というメルさんの声で、弓がギリギリと引かれる音がしていく。


グリフィンはまだ、こちらをめ付けている。


ギィン!!


とても硬い弦音つるねが響き、目にも留まらぬ速さで矢がはしる。


風に流され、グリフィンから数歩離れた空を、矢が突き抜けていく。


「ケァー!!」

威嚇のつもりか、グリフィンが叫ぶ。


また、弓弦ゆづるが引き絞られる音が響いていく。


再び高質な金属音がして、箭が耳元を切り裂く。

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