第35話 上昇気流
翌日、全員で装備を整えて出立する。兜や盾、槍、そして食糧は鈍気の背にくくりつけて運ぶ。普段よりも重い荷物に鈍気は不満たらたらだけれども、気にするわけにもいかない。蹄がちょっと長いので、帰ってきたら手入れをしてあげた方がいいかもしれない。
丸一日山中を進んで、メルさんいうところの「この辺りからがグリフォンの縄張り」につく。日はかなり傾いていて、「流石のグリフォンも夜には目が効かない」ということなので、一晩の野宿をする。
野生動物に襲われる危険を問うと、メルさん、
「グリフィスの縄張りでそんな危ない獣は生き延びられない」とのこと。
それもそうか。子育て中のグリフォンなら、目立つ獣はとっくに狩り尽くしている。それでも夜の見張りは習い性のようなもんで、やっぱりみんなで交代して張り番をした。
翌朝、日が昇るとまだ薄暗いうちに周辺警戒を始める。何しろグリフィンを仕留めただけでは意味がない。巣を特定して、荷物を少しでも回収しないとならない。ロバの命は流石にないだろうけれども・・・。
身を隠した藪から顔を出し、空を見上げるとグリフォンが1頭(1羽?)円を描くように空を旋回し、上昇しているのが遠く見えた。
「あの辺りに巣があるのかな?」
と問うと、
「わからん」
というのがメルさん。
「流石にグリフィンを狩った狩人なんて聞いたこともない」
「それもそうか」
それでもまあ、斜面を伝って近づけそうなので、皆で鈍気を庇って近づいていく。
と、なんか嫌な感じがするので顔を上げると、グリフィンが一直線に降下してくるところだった。
「盾を!」と叫んで、自分も鈍気にかけておいた盾を取り、掲げる。
初撃をなんとか凌ぐことに成功した。爪に引っ掛けられればあっという間にロバの仲間入りだ。
後ろから頭に兜が被せられるけど、顎紐を縛っている時間がない。空を旋回して第2撃を狙うグリフォンから目を離さないようにしながら、剣の革紐に手を通して巻きつけ、抜き放った。
「カルルは槍を!メルさんは通し矢を!師匠とフィルさんは盾だけを!」
と叫ぶ。
持っただけだった盾の把手に腕を通し、しっかり構えられるようにしておく。
鈍気とグリフォンの間に入るように位置を変えつつ、警戒を続ける。
「メルさん!鈍気の後ろに!」
ギリギリと弦が引かれる音がする。
と、グリフィンの動きが止まった。
「くる!」盾の隙間から目を離さないように構える。背中に鈍気の背の荷物を感じる。流石に怖い...。




