第34話 グリフォン
ほとんど寝たきりのような女3人をなんとかかんとかロッテンナウに運ぶと、これまたえらいことがリーシアたちを待っていた。
なんと、ロッテンナウがグリフィスに襲われて、鈍気が負傷し、ロバが強奪されたという。ベル師匠のロバ、ロバには出立に備えて生活用品を積んでおり、荷物が奪われたのはかなり痛い。
何よりも師匠が激怒していて、放っておけば一人でも討伐に行きかねない。
リーシアにはそのグリフィスなるものの知識がないので、師匠をはじめロッテンナウでの目撃証言を聞き込んでみた。
と概ね次のようなことがわかった。
一つ、鉤爪を持つ飛行生物。鷲などの猛禽類に似ている。
二つ、猛禽と異なり、一対の翼に対して前脚、後ろ足があるという。
三つ、頭部には鋭い嘴があり、前足の鉤爪と相まって、とても危険。
四つ、ゴブリンの巣とは逆の方向に巣を作り、子育てをしているらしい。
五つ、光り物を好み、宝飾品を集めるらしい。
なるほど。麒麟のような不思議な生き物だ。とはいえ、空が飛べるというのは脅威になる。少なくとも槍だの剣だのでは勝てる気がしない。魔道も使えなくはないけれど、これで十分だとは思えない。
「弓を引けるやつが必要だ・・・・」
なんか、変な感じがしたので顔を上げると、ゴブリン討伐に協力してもらっていた猟師に皆の注目が集まっていた。
「え、俺・・・?」
「お、俺は体の弱い母ちゃんいるからだめだ!」
と、一人には即座に拒否されてしまった。
「俺は、まあ、あんたらが守ってくれるってんなら、弓で援護してやるぐらいはやらんでもないけど」
「それは助かる!ぜひ、同行してほしい」と、手を取ってお願いしてみる。
「お、おう・・・」
「それじゃ準備しないとだな」
またフォートさんのところに行って、装備を変えないと・・・。
大将に3人の女を預け、5人でゾロゾロとフォートさんの店に向かう。フォートさんはボロボロになった装備に面食らっていたけれど、逆に喜んでる様子なのが気になる。
「いや何、これだけボロボロにされていながら、お前たちには大きな怪我もない。こりゃ俺の兜が優秀だったせいだって、自慢になる。このバックラーなんぞは看板がわりになるぞ」
「それで...」
「いやわかってる、あれだろ、グリフィスに奪われた荷物を討伐がてら回収にってんだろ」
話が早い。
「盾はもっと大きな、頑丈なもの。魔道士の二人は軽くて弱くてもいいけど、大きいもの」
「俺に矢を多めに。箙も大きいものにしてくれ」とは猟師さん。
「あ、ところで猟師さんの名前は?」
「ずいぶん今更だな」と笑われる。
「メロヴィク」とはフォートさん。「鏃に返しがあるものとないものがある。両方持っていって、使い分けるといい」
「わかった」
「返しのない矢は遠くまで届いて当てやすい。返しがあるものは抜けにくく、グリフィスの傷を深手にするだろう」
「なるほど」
「鎧はどうする?」とはフォートさん。
「グリフィスの巣というのは、簡単に行けるところなのか?」というと、メロヴィクさんが「とんでもない!奴らは高い山に巣を作る。子供が襲われたくはないらしいからな」と。
「鉤爪があるっていうから、鎧は引っかかりにくい、鉄板で打ったものがいいって思ったんだけど」
「なるほど。でも、そんな鎧じゃ流石に、巣に近づく前に疲れてしまってさよならだ」
「むう。それじゃ、この籠手を借りれないかな。それと、柄頭に革紐を結べないかな。手を通して、剣を取り落としたりしないように」
「流石に、王様から下賜された剣に穴開けるわけに行かないから、こいつを持っていけ」と、割と立派な剣を貸してくれた。面板の付いている兜に変えてもらい、一晩また宿で泊まってから出立することにする。




