第23話 ロッテンナウ
夜の帷が近づいたロッテンナウの中心部はなかなかに賑わっていた。ヴェイツェンドルフでは見たことがない。父様たちはお祭りか、家でしか酒を飲んだことがなく、酒場のような店がない。というか、そもそもお店があった覚えがない。
途中で寄った村々も大同小異で、そう言えば、李書文の王南良もそんな村だった。
ところがこのロッテンナウは、ミュルクヴィズほどではないにしても、中心には商店がある「街」の風情を持つ。
「ここ、ロッテンナウは武器のような鉄製品で知られていてね。リーシアも剣というのは無理にしても、鎧の一つでも誂えるといいんじゃないかな」
とはベル師匠の弁。
カルルはフィルさんと何やらニヤニヤしている。なんだろ、気持ち悪い。
黄昏時でも明るい店を探し、店主を探してロバをどう繋ぐか、宿をどうしたらいいかを問うてみる。ここも王都同様、馬小屋があるとのことなので、皆でロバと鈍気を繋ぎにいく。荷物を持って再び入り口をくぐり、カウンターの主人にあらためて挨拶をする。
「王国騎士のリーシア。同輩のカルル、魔道の師匠ザオベルとその従者フィレベルク。西へ向かう旅の途中だが、今晩の宿を頼みたい」
店主らしい親父は
「銀貨で5枚」
というので、その通りに出そうとするとベル師匠が止める。
「まあ、待て待て。
「親父、この値段というのは高すぎないかい」
なるほど、ミュルクヴィズと同程度だったから妥当だと思ってたけど、そもそもがふっかけられてたかもしれないのか。
「た、高すぎるだなんて」
「この街なら酒場の売上が結構あるから、こんな値段でなくてもやっていけると思うけれど?夕食と一晩の宿ならロバ2頭を入れても銀貨2枚といったところだろう?」
ええっ!そんなに!?
「いやいやいや、流石にそんなに安いわけはないですよ。それじゃ銀貨3枚と銅5枚では」
「なんだ、まかるじゃないか。でもせいぜい、銀貨2枚に銅貨5枚までだね」
「それじゃ、銀貨3枚ってことでどうです?」
「決まりだね」
ってことで、銀貨3枚を出す。4人とロバ2頭でどう銀貨3枚になるのか計算がわからないけれど、こんなもんか?
鍵を二つ受け取って、荷物を部屋に運び込む。
扉に鍵をかけ、食堂に戻ると声をかけてくる男がいた。
「ようようよう、騎士様よう」
ん、なんだろ。
「随分お若い騎士様みたいだけど、戦なんかできんのかい?」
「そうですね、まだ戦争には参加したことはありませんね」
と返しておこう。
「おいおいおい、君がそれをいうのかい」とはベル師匠。
ピクリと男たちが反応する。
「確か君は熊を一頭、討伐したんだろう?」
「!!!」
ま、まあこれが普通の反応かな。
「ま、まさか1人で?」
「一応騎士様の討伐隊ではありましたけど、遭遇と戦闘、討伐は1人でした」と、なんだかよくわからない丁寧語になってしまう。
「な、舐められたくないからって、あんまりは、ハッタリは言わん方がいいぜ・・・」
「まあ、ハッタリだと思われても結構ですけど、ただあまり無礼ですと、王の代理人としてそれなりに罰は与えなくてはいけないので、そこの当たりは汲んでいただけると助かりますが」
「ば、罰か」
「ええ。私たちの身分を知った上で襲撃してきたものは、これまでその対価を命で支払わせてまいりましたので」
「い、命か・・・」
「とはいえ、あんまり王陛下の名前で威張り散らすのも好きではありません。
「ここは、言葉は問わずに、腕試しということでご納得いただけませんか」
「そ、それは」
「もちろん、命まで取るようなことはしません。お互い相手の左手首を右手で掴んで、膝をつかせたほうが勝ちということでいかがですか」
「わ、わかった」
と、立ち上がった男は、背は高くはないが、肩幅が広く、太い腕をしていて話に聞く形意拳の達人、郭雲深を思わせた。話に聞くだけだったけれど、李書文同様に背は高くなく、そして「縦よりも横が大きい」という噂があった。流石に大袈裟だとは思うけれど、目の前の男を見ると、あながちそう言いたくなる気持ちもわからなくはない。
さて、




