第14話 村の朝
久しぶりにのんびりした朝を迎え、身支度を整えた後は、あらためて明る朝の日差しの中、村民を集めさせた。
こういった時には身だしなみを整えて、いう言葉に説得力を持たせないといけない。
「おはようみなさん。自分はミュルクヴィズの騎士、リーシア・ヴェイツェンドルフである」
と、腰に佩いている剣の柄頭を持ち上げて見せる。
訳もわからず集められた村人たちは、不肖不肖、うな垂れる。一応は会釈と受け取っておく。リーシアたちも生まれついての貴族という訳じゃないから、あんまりめくじら立てても仕方がない。
なんで集められたかも理解できないまま、互いに顔色を伺いあっている。
「さて私は、昨晩みなさんの村に宿を借り、ご厄介になった訳だが、夜半、こちらの男どもに襲撃された」
言葉の意味が伝わると、静かなどよめきが村の広場に満ちた。それはそうだろう、仮にも国王の代理人とも言える、王の騎士が村の滞在中に襲撃されたのだ。場合によっては村自体が反逆罪を問われかねない。襲撃者に連座させられれば、死刑になるかもしれない。
カルルに引き摺り出された二人の男を見て、村人が絶句する・・・。
静まり返った村人たちを見渡して、様子を見る。特に顔が青ざめている女が二人いる。襲撃者の妻か。襲撃者二人は既に弱り切っていて、言葉も発しない。
「この襲撃がこの二人だけの考えであれば、この二人を死罪に処してこの件は終了する」
二人の内儀が絶望的な表情で顔をあげ、リーシアを睨む。
「だ、だけど・・・」
言いたいことはわかる、が。
「発言は許可していない」
と言わねばならない。
「二人だけの考えであれば死罪に処して終わるが、だがしかし、二人だけの考えで剣を取って村長宅に侵入し、騎士二人を夜討ちするのは無理がある」
内儀二人は視線を落としたが、一方、数人の村人が驚愕の表情を浮かべて顔を上げた。
「何よりも、動機がない。動機とはつまり、私たちの命を狙うわけ、理由だ」
ふむ。つまり今顔を上げた村人が、村長らと結託していたわけだ。
「わ、私は何も知らない」
小さいつぶやきだが、はっきりと村長の声が聞こえた。
「なるほど。村長は知らない、と」
「う、嘘だ、俺たちは村長に命令されたんだ!」
と、若い方の襲撃者が言う。
「確か、君は昨夜、盗賊が騎士になりすましていると村長に言われたといったな」
とはカルル。
「そ、そうだ。俺たちは村長にそう言われた」
年嵩の方が低く、小さい声で、それでいてはっきりいった。
「私は知らない・・・」と繰り返すのは村長。
「おかしいな。それではなぜ、昨夜、長は、扉の前にいたんだ?」
と問う。
「襲撃に関係のない、襲撃を知らない人間が扉の前にいるのはおかしいのではないか?」
人間、切羽詰まった時はどんなに辻褄が合わない嘘でも、平気でつく。逆に言えば、きちんと知りたい時に問い詰めるのは悪手だ。
「まあいい」
「その男、その女、その男。前に出ろ」
と、先ほどの共犯者を特定する。
びくりと肩を跳ね上げ、大げさに反応する。これはハズレかな。
さてさて。




