第13話 山間の村
腕を拘束した野盗の首領を槍で小突きながらアジトに案内すると、身を隠していた射手が、首領の様子に耐えきれずに姿を現した。場合によっては配下に加えてもよいかと思っていたけど、これじゃだめだ。
首領越しに槍を投げて、射手をしとめておく。首領がふりかえるけれども、気にしてもしかたがない。ロバの一頭でもいればいいのだけれど。
小屋の入り口は扉にかんぬきがかかっているけれど、抜いた剣を扉の隙間からさしこみ、跳ね上げる。
待ち伏せを警戒して扉を蹴り開けるが、予想に反して、いきなり斬りかかってくる留守居はいなかった。周囲の村から狩ったような奴隷もいない。
「て、てめえ・・・」
塀のそばに転がした首領がうめいているけど、まあ、どうでもいい。
干し肉があるのでいただいておく。ソードが何振りかあるので、程度のよさそうなのを三振りほど見繕っておく。砥石も欠かせない。それから調理などにつかうのか、小振の小刀。
ランプがちょっとした贅沢品だ。それから油。菜種だろうか。
それからガラガラ音がするからなにかと思えば銭入れだった。銅貨、銀貨が少し。
金貨が3枚もあったのはちょっとした驚きだ。何をすればこんなに貯められるのか。
予備になるような武具はほかに見当たらない。
こんなものか。
アジトの中をあらかた見渡して、ほかに目ぼしいものがないのを見てとる。
表に出ると射手のつかっていた弓が目についた。箙には何本かの箭がまだある。弓の使い方は習ったことがないけれど、試してみるのもいいかもしれない。射手の体をあらため、箙、替えの弓弦らしいもの、小手のようなものを頂戴する。
当然、胸に刺さったままの槍も、しっかり回収しておく。
「てめえ、てめえ。殺す、殺す・・・」
まるで唱机(蓄音機)だ。
「そうですか」
と、剣をぬいて、心臓に突きたてておく。これで静かになった。
アジトの周りを見渡し、ロバなどを飼っていないことを確認する。
荷物はそれほど多くはない。
カルルの元に戻ると、カルルも目ぼしい防具をいくつか回収し、遺体は残すところ3人まで片付けていた。箭も2本回収してある。
二人で協力して片付け、道をもとのように均す。
流石に周囲に死体が転がっている中で野営をするのは落ち着かない。少し歩いて野営した。日程として中途半端なのか、あまり野営向きの場所ではなかったけれど、しかたがない。
火の始末、身支度を整えて歩き出すと、すぐに森が開けて畑が見えた。野盗に邪魔されていなければ、昨日のうちについていたのか。
「夜盗を討ったことは黙っておいてね」と、カルルに釘を刺しておく。こう言ったことは念には念を入れておいた方がいい。
畑仕事をしている、一人の農夫に声をかけておく。
「ミュルクヴィズからウェスタヤルトに向かう、騎士である。一晩厄介になりたいが頼めないだろうか」
「へ、へい」
む、なんだか返事が田舎くさい。まあ、いいけれど。それとも昼前に着いたから驚いているだけか。
農夫の案内で村の垣根を越えると村長らしい農夫が女性をともなって出迎えた。細君だろう。
「村長です」
「ミュルクヴィズの騎士、リーシアとカルル。一晩ご厄介になりたい」
と、王から賜った剣の柄頭を持ち上げてみせる。
「承知いたしました。ところで騎士様は道中、厄介ごとにあったりはしていませんか」
「いや、特にこれといってないな、な、カルル?」
と、目配せをしておく。
「あ、ああ・・・」
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夜、長の家の客間では壁の厚さを確かめた上で、二人して武具をつけ、剣を抜き身で捧げ、壁に寄りかかって座り込み、交互に眠りにつくことにする。
夜も更けたころ、廊下を歩いてくる足音に気がついて、カルルの手を軽くたたいておこす。
足音はこっそりと進んできて、扉の前でとまる。まったく困ったものだ。わざと変な気を起こさないように王の騎士だと名乗っておいたのに・・・・。
姿勢を整えたりすれば、気づかれかねないので、姿勢はそのまま。
小さな音がして、鍵が開けられる。細く扉が軋みながら開けられ、ランプの灯りが部屋にさす。ランプがそっと部屋にさしこまれ、照らす。
男が二人、剣を構えて寝台に忍び寄る。
そのままランプを掲げたまま、剣を二つの寝台に突き立てた。が、手応えに異変を感じ、戸惑う。
「夜分になんの御用かな」と、立ち上がりながら問いかけてみる。
「ひ、ヒイィイ!」と、完全に恐慌をきたしていて問いに答えられる余裕はない。完全に突きつけられた剣の前に狼狽えている。振り返れば扉の前に村長が尻餅をついていた。
「お、俺たちは村長に言われて!」
「盗賊が王国騎士になりすましてるって言われて!」
村長にはカルルが剣を突きつけている。
「すまないが、明日、ゆっくり話を聞かせてもらう必要がありそうだな」
「こんばんは申し訳ないけれども、ゆっくり眠りたいので、全員拘束させてもらう」というのはカルル。
そうして家人を奴隷一人に至るまで縛り上げ、確認してから二人は久しぶりに気兼ねなく眠った。




