第4話 圧倒
左手にシールドを持てないのは少し心もとないけれども、やむをない。本来なら左前に構えるところを、木剣を突きつけた形の右前に構える。
アルヌルフさんはヒュッ、ヒュッと眼前で振るってから、スッと眼前に構える。リーシアのような右前ではなく、やや右前といった具合。
少し剣を突き入れてみて、様子を見る。アルヌルフさんはこれを軽く剣先で払って対応する。カツ、カツと乾いた音がして、剣先をずらされる。
当然だけど、互いに力は入れていないので、姿勢が崩されることもない。拍子をわずかにずらして突き入れる。アルヌルフさんの反応は少し遅れ、眼前に切っ先を迫らせられるが、引き手で払われる。
その瞬間に歩をすすめ、左掌を腹にあてて、掌根を突き込む。
ずしっという手応えがあり、アルヌルフさんの体がくの字に折れ曲がった。
即座に体を引いて、備える。
「ぐ」
と、アルヌルフさんがうめいて、崩れおれた。
謁見の間が凍りついた。
床に倒れたアルヌルフさんがうめいているのに、誰も救護にこない。手遅れになっても困るので、
「すみません、誰か騎士さまのお手当てをお願いします」
と、王座にむかっていってみる。
「う・・・・」
と、王様はほぼ凍りついている。
「誰かある!」と呼ばわったのは宰相様。これでようやく動き出したのが、アルヌルフさんと共に並んでいた騎士さまたち。
王座の間なのに、ドタバタと足音を立てて、アルヌルフさんを運んでいった。
さて。
「発言をしてもよろしいでしょうか」
といってみる。
「よ、よい。許す」
とは王様。少し声が震えている。
王様の視線が変だなと思ってみてみたら、視線の先はリーシアの踏み込みでひびの入った床材があった。まあいい。
「これでリチャードさまの武威は示されましたか」
「う、うむ・・・」と言いかけたところを、
「陛下!」と別の騎士さまがさえぎった。
「アルヌルフは素手を使うという虚を突かれただけで、武技に劣ったわけではございませぬ!」
「マンフレート!」と宰相が制止する。
ハッとして、マンフレートさんが固まった。つい激昂してしまった、自分の不敬を悟ったらしい。
「陛下、失礼しました」
「よい、許す」
宰相さまの視線で王が許可を出す。
「手管さえ承知しておれば、こんな小手先など私には通じはしません。
「私がこのものに真の力の差というものを見せつけてやります」
「リーシア」
とは王様。
「は、私には毛頭異存などありようがありません」と、ひざまずいて答える。
またもや連戦か。




