第45話 従士見習いカタリーナ
リーシアは月のものもはじまったし、激しい運動をすると胸が擦れるようになったので、布を強く巻いて押さえるようになっていた。近頃はその身支度の間、他の従士から微妙な距離感をもたれていた。いっそカタリーナと二人部屋になることで、かえってスッキリする気がする。
月のものはとにかく危険だ。よく気をつけておかないと、戦場での命取りになりかねない。
あれ以来カタリーナはリーシアに対して腰がひけてるようだが、正直そこまで構っている余裕はない。練功、剣術槍術、体力づくり。当然カタリーナにもきちんと指示を出さねばならない。騎士さまに身柄を預けられた以上は、カタリーナの不始末はリーシアの不始末に他ならない。
朝はリーシアよりも早く起きるように叩き起こす。流石に男子従士たち同士のように尻を蹴飛ばすようなことはしないが、まあ似たり寄ったり。水汲みに駆り出す。流石に男子従士と同じ重さは持てないけれども、眠りこけてる男子の従士見習いよりはよほど厳しい。
部屋の掃除は二人だけでおこなうために、以前よりは大変になっている。
二人で体をほぐした後は、リーシアは套路を通し、カタリーナには馬歩站樁を命じる。当然すぐに潰れるけれど、すぐにほぐして繰り返しておくように命じておく。
朝食は他の男子従士、従士見習いと一緒にとる。
食後は畑仕事。カタリーナはぶうぶう文句を垂れるが、相手にしない。
いわく
「騎士に出仕した意味がない」
「これなら村で農夫になったほうがましだった」
「これではせっかくの力が衰え、腕がなまる」
などなど。
ただ一言だけ言っておこう。
「出仕した以上は、村では死んだものと同じ。帰っても家などない」と。
あっという間に涙ぐんで、ぐすぐす言い出してしまった。
結局これによって、相手にできなくなってしまっただけだったが。
午後には走り込みと体術。カタリーナに体術は早いので、刁球を作らせておく。体術にはカルルと八極対練をする。自分のため、というよりも、カルルに八極拳の闘い方を学ばせるのが目的だけれど。
陽が傾いてきたら夕食の支度を始める。
腹がくちくなったら、早めに床につく。




