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神槍は転生してもやはり神槍を目指す  作者: Scull
第1章

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第35話 現場

「総員、鎧を着用せよ」


静かな、それでいてよく通る声で騎士さまが命令する。

騎士さまも下馬して、ロバに積んでいた鎧をつけ始める。従士が先に着鎧したら騎士さまの手伝いができないので、まずはそれぞれの班でリチャードさま、アルノルトさんの支度が先になる。


騎士さまはまず、騎乗用の靴から徒歩戦用のものに履き替える。その上から鋼の輪を連ねた穿き物を穿き、腰帯を締める。


しゃらしゃら、しゃらしゃら。

鋼の音が流れる。


さらに同じように鎖を綴った上着を着る。

腰帯には、剣を吊るす剣帯を締める。が、まだ剣は吊るさない。


鋼の膝当てを従士から受け取って着けたら、靴の革紐を締める。肘当も締める。

当て布を被った頭に鋼板を筒状にした大兜を被り、顎紐はしっかり締める。

顎紐を締めたら、籠手をつけ、二人の騎士は近くの岩に腰を下ろす。


従士たちは皆それぞれ、鎖の銅鎧、兜を被る。皆、革の顎紐はしっかり結ぶ。

鎧櫃をまとめて、ロバに積むと支度が済む。


従士たちは盾を持って、使い慣れた鉤付きの槍。騎士さまは帯剣した上に盾を持ち、騎槍を構える。


全員で、槍の石突で、地面をつく。


帰還組は村長さんと共に来た道を降り始める。討伐組は騎士さまを中心に隊を組み、年長のライナーさんとグンタハールさんが先頭で、フェルディナントさんが最後尾。ヴォルフガントさんとリーシアが2列目、カルルが騎士さまの援護につく。騎士さまのそばに、レインベルトさんがいる。


がっちゃ、がっちゃと音がするが、気にせずに山を登っていく。

登山道は人が一人、登り降りするのにいっぱいぐらいの幅しかないので、足元には特に気をつける。ちらほら野草が花をつけているが、そんなものをのんびり鑑賞している余裕はない。


登山道の案内はレインベルトさんが声でするが、言葉の訛りで少しわかりにくい。

鎧の重さで次第に息が乱れてくる。

さすがに完全装備での登山は厳しい。

特に騎士さまの装備は厳重なので、相当に重いはずだけれど、リーシアたち従士と同じ程度にしか息が弾んでいない。恐ろしいまでの体力だ。


木々の間を縫うように、山を登っていく。


しばらくすると、レインベルトさんが声を出し、近くの空き地が現場だという。


騎士さまが指示を出し、警戒しながら村人の安否を確認するようにいう。


道から、暗く広がっている広場を覗きこめば、どうやら村人らしい遺体の靴を履いた足が見えた。


「遺体があるようです」

と、リーシアがささやくと、

「うぬ」

と騎士さまが唸る。


付近には熊らしい生き物の気配はないようにみえる。


警戒を解いたわけではないけれど、少し緩んだ緊張で、騎士さまが広場に足を踏み入れた。


影に慣れた目で見てみれば、オイゲンと言った村人の悲惨な状態がわかるようになる。案内をしてきたレインベルトさんは、顔が既に真っ青だ。


最初に確認できたのはオイゲンさんの足で間違いなかったが、足は体にはつながっていなかった。腿が食いちぎられ、体は三歩ほど離れたところに上下が逆にある。腹部がバッサリと抉り取られて、熊がはらわたを貪ったことがわかる。

胸の上にあるべき顔が全く見えず、後ろ髪らしいものしか見えないところを見ると、後ろから引っ掻かれた時に首を折られたようだ。


数日経っているのは明らかで、胃をぎゅっと掴まれるような異臭がこもっている。腹だったところには蝿がたかり、黒ずんでみえる。



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