第30話 突き
翌日には傷はふさがったものの、まだ皮が固まるほどではなかったので剣はふらず、盾をもって八極拳をした。
同期でも同様にマメをつぶしたものが出たので、きちんと洗うようにすすめ、付き添った。
カルルたち先輩従士は木剣で打ち合いをしているので、套路を演じながら観察してみる。神槍李書文の記憶がいらだちをみせるがかまうことはない。
いくら槍で身を立てるといったところで、剣が認められて騎士にならなければ話にならない。騎士様のところで教われることなら、全て身につけておいて損することはない。
斜め上から切り付ける。振り抜いた後に剣を返して、胴をなぐ。剣をまっすぐつく。振り下ろしに合わせて剣をふり、剣で剣をいなす。
左手に持った盾は、剣をまっすぐ受けるのではなく、角度をつけて流している。それはそうだ、突かれたものを受けてしまえば盾は壊され、身を危険に晒す。
ときには盾をもって相手を押し、姿勢を崩す。見た目は「按」のようだが、実際には「肘」だろうと思う。剣による突きだって、拳打に近い。
そうは思うが、あまり思い込むのはよくない。
思い込みのあまり、自分の徒弟に教えた套路を誤った徒弟がいたぐらいだ。
傷が癒え、剣を振れるようになると再び剣の打ち込みを始めた。斜めからの打ち込みがやはり基本だ。兜の角には当たらないように、正確に振れるように気をつける。いくら練習用の木剣でも、角に当て続けていたらささくれてしまうし、折れてしまうかもしれない。
まだ斜めからの振り下ろししか教えてくれないので、歩法に工夫を加えてみた。盾を前にするので、打ち込み前は左四六式になる。
そこで踏み込みを左にして左弓箭式になりながら切り付ける。
今度は後ろ足の右足踏み出して、右弓箭式になりながら切り付ける。
左に抜ければ、盾の陰から体が出て、防御は落ちるが、敵の顔面を攻撃できる。
右に抜ければ盾の陰になって剣の勢いがやや落ちるが、敵の後頭部を斬りつけられる。
とはいえ、当然敵だって黙ってやられることはない。盾の防御は想定しておくべきだ。
盾の構えを崩すほどの勢いがなければ、鍛錬の意味がない。
しばらくしたら、手のひらに血肉刺ができていた。ジンジン痺れて痛いけれど、皮が破れなければ消毒の心配はない。その点では気楽なものだ。
同輩の従士がよるうなされていることを除けば。
すっかり眠りが浅くなり、疲れが取れない。リーシアだって痛くないわけじゃないのに。
カルルも去年はこんなだったんだろうか。だとしたらがっかりだ。
冬になる頃には、右から胴をなぐ動作を教わった。木人の胴体部分には、藁を巻いた上から鉄板が取り付けられ、鎧の手応えを鍛錬できるようになった。
年明けごろには、突きを教わる。
要点は刃を横に寝かせ、兜と鎧の隙間を狙うことだった。
これまで敵の体に対して刃を立てることばかりを考えてきたので、刃を立てないように剣を使うのには戸惑った。
いいね、ご評価いただけましたら幸いです。




