第20話 出仕
秋祭りで当然のように優勝したリーシアは、そして、秋の収穫とともに騎士様のお館へと出仕することになった。村でとれた作物を袋に詰めて、荷馬車に満載する。
村で飼っている馬をそれぞれ馬車の軛に繋いでいく。
馬たちはそれぞれまるで会話でもしているように顔を見合わせ、いななき、ジョールグさんとそれぞれの椅子に座る人がふるう鞭を合図に歩き出した。
ジョールグさんの隣に座るリーシアは、座席からふりかえって父さまに手をふる。
「いってまいります」
村から騎士様のお館は馬車でも2日かかった。
鬱蒼としげった森の間をぬうように三台の馬車は進む。
森を抜け、開けた視界から緩やかな丘の上にたつお館が見えた。丘の斜面には木はなく、道が右にいったり左にいったりしながらお館につづいている。
お館は壁がぐるっと囲んでるようで、上の方にだけ窓があった。
窓からはチラチラと白いものが見える。
見張りだろうか。
馬車はウネウネと道にそって登っていく。
お館の手前には頑丈に鉄で補強された、扉がある。
「いつもお世話になりますー」
と、ジョールグさんが大声でよばわると、ガタガタと音がしてから、扉が開いた。
扉の中には石畳が敷いてあり、分厚い壁の断面が見えた。暗い門の下をぬけると、丘の麓から見えた窓のある建物があった。
壁と建物はつながってなく、間にはちょっとした庭があった。
門を開いてくれたのは屈強な男の人で、馬車が内側にはいるとふたたび門をとざした。
かなり太い閂を通して門の中が真っ暗になる。
建物の前にはみたこともないほどの人がいた。
すると、ジョールグさんが馬車か降りて目配せしたので、リーシアも降りて馬車と共にその人たちの前にまで進んでいく。
庭の真ん中あたりで馬車を止め、車輪の前後に車止めを噛ませると、みんなで揃って館の前にまで進んでいく。
こんなに大勢の人に囲まれるなんて、秋祭り以来だけれど、このお館にはいつもこんなに人がいるのかしら。
館の前に並んでいる人の前にまでいくと、ジョールグさんが膝をついてしゃがんだので、リーシアもそれにならった。多分、この人が騎士様なんだろう。
「ヴェイツェンドルフから、年貢を納めに参りました」
「うむ。ご苦労だった」




