第41話 襲撃(その2)
「俺の息子は最初のコルムの戦いで守備兵をしていて、そこで戦死したんだよ」
とその男は続けていった。
「あんたの話じゃ、最初の戦いではあんたもコルムを攻めたんだろ」
「それはそうだね。そこは否定しない。私があなたの息子を殺したかもしれない。それでどうする?」
「ど、どうするって?」
「わかるだろう?私は騎士だ。命が狙われていると言われてむざむざやられるわけにはいかない。ましてや理由が戦場での戦働きでは誉にこそなれ、咎にはならない。息子さんにしたところで、戦働きがあれば誉となったのだろう?」
「う・・・。む、息子は兵士だ。戦場で多少敵を倒しても何にもなりはしない」
「それは確かに、同情したいところではあるが無理だ。戦場では負けた方が勝った方に支払うものだ。私が息子さんを倒したかは定かではないが、息子さんは死に、私は生きている。これは言い換えれば、私が息子さんに勝ったと言えるだろう。であれば、私はその兵士の父であるあなたに、何も申し上げる言葉はない」
「う、うるさい!そ、そんなことはわかってんだよ!戦争で死んだ息子がどうにもならないってことぐらいは、わかってんだよ!」
こうなってしまうとリーシアにはもう、何もかける言葉がなくなってしまう。
「・・・」
「全くお人よしだな、グリフォンリッターは」
というのは師匠。
「この話は最初から、君が「やるならかかってこい、命懸けで」と言っていれば終わる話じゃないか」
「そ、それはあまりにも・・・。」
とはフィルさん。
「でも、そんなもんだろう?」
「騎士が倒した兵士の仇を討つなら、騎士に実力で勝つしかないだろう?これは街中でおこなわれた犯罪とかではないんだ。双方が覚悟の上で戦った戦さなんだよ。言ってみれば、決闘や果し合い、裁判のようなものだ。その結果が自分の納得できるものではなかったとしても、それをひっくり返すことはできないだろう?それをひっくり返したければ、新たに決闘を申し込むしかない」
師匠は無情に畳み掛けた。
「う、うう・・・」
これには流石に居た堪れない。
「武器を用いた決闘では流石に大人気ない。素手でよろしければお相手いたしましょう」
と、武器を力強きものに預け、男の前に立った。改めて見ると男はおそらくリーシアの父と同年代。なかなか本気にはなれない。
「お、俺だって!俺だってー!」と殴りかかってくるが、若い頃に兵士をしていた程度の人間では、流石にかすりもしない。かわした上で軽く肩を突く。当然それほどの力を入れたわけではないけれども、男の肩は挫け、もんどり打って倒れ込んだ。
「一応はこれでも騎士なので、そうそう男性とはいえ市井のものに遅れはとりませんよ。いくらでもかかってきなさい」
そういって、男たちが全員殴りかかるのを止めるまで相手し続けた。




