第36話 魔女の大蛇討伐
「では、といっては何ですけど、師匠がやった大蛇の討伐ってのは結局、どうやったんですか」
まあなあ。もういったと思うんだが、槍の勇者なんていなくて、風の噂で大蛇が出て困ってるっていう話を聞いて出かけたんだが、伝説の勇者と違って私は賢かったからな。蛇に詳しいっていう奴を道中探して同行させていた。ところがこいつが飛んだ食わせ物で、大蛇に詳しいどころか蛇についても碌に知らなかった。
ひどいものだ。何しろ金蛇を飼ってるだけの人間だったんだよ。金蛇は知っているか?
蛇と言われちゃいるが、手足のある「トカゲ」だ。トカゲの、それもちっちゃなトカゲの生態に詳しくったって、大蛇の討伐に何の役にも立たないよ。それが分かったのは大蛇のいる村に着く直前さ。
お役御免と追い出す訳にもいかず、しょうがないから討伐中はみんなで忘れてたよ。大蛇を討伐した後にはどこに行ったのか行方不明になっていた。どうでもいい奴だったけどな。それが今じゃ槍の勇者だ。おかしなものさ。
「それじゃどうやって大蛇の討伐をしたの?師匠」
ま、当然だけど最初は村に入って情報収集だな。
「私は宴会だったって聞いてますけど」
だ、黙っててくれよ。君以外はそんなの知らないんだから。それでもほら、村に歓迎されると色々情報が集まるだろ?そういうのも情報収集なんだよ。
で、結局やつは時折出現しては、村人や飼っている家畜、そういったものを丸呑みにしては姿をくらますということを繰り返していて、私たちが行くまでに5〜6人の村人、全数不明の羊、豚、鶏を食らっていることがわかった。
「すごいな、それ。ほとんど村そのものが終わりかねない・・・」
そうなのか。私にはわからないけど。
そこで私は奴が次に羊を一頭飲んだところを見計らって気を失わせ、頭を切り落として討伐したんだよ。
「あ、面白そうなところ飛ばした・・・」
え?
「てっきりフィルさんみたいに面白おかしく話してくれると思ってたのに!」
いやだって、私は吟遊詩人じゃないし。
「そうだけど!そうだけど」
「いや、今のはザオベル師匠が悪いですよ。みんなどんな冒険譚が聴けるかと思って期待していたのに、大蛇に苦戦もしなければ苦労もしないで首を切り落としちゃうんだから」
そうなの?
「そうですよ、ベル師匠!どうやって羊を囮にして動きを止める策を考え出したのかとか、大蛇の動きをどうやって止めたのかとかを楽しみにしてたのに」
ご、ごめん。




