第23話 Go West
リーシアは夜遅くまでかかって支度を整え、翌日、昼前には出立の支度が整った。
リーシアにザオベル、フィレベルク、そしてオルクスの気の荒いもの、キュリオ、ロバ、それにワゴンを1台。ワゴンにはそれぞれの荷物が荷物が乗せられ、防水布がかけられている。
リースブルクにはカルルを筆頭にフロールヴ、ぺぺ、メロヴィク、バルティルド、シギベルト、スキュラ、グリフォ、ギーゼルヘルとクリムヘルト、その子、ビュクヴィル、ソルザル、カールが残る。人数としては砦の運営に十分だ。ただちょっと文官不足が心配ではあるけれど。
皆に見送られて、リーシアのワゴンは砦の門から出立していく。皆とは言いながらもその中にカルルはいない。
おそらく今生の別れとなるのは確実なのだから、カルルという男の顔を目に入れておきたかった。彼の面差しを記憶に留めておくために。
とはいえ、現れないのであれば望んでも致し方あるまい。
リーシア一行はまず、オルクスドルフへ向かうべく、道を辿る。
森の道を辿り、村の門を叩く。
久しぶりに会う奔るものにたいそう歓迎されたが、事情を話すとなんとも残念そうになった。
一晩泊まり、気の粗いものを連れていく許可を得、朝早くに出立する。
オルクスドルフから1両日中にイストドルフにつく。
イストドルフには数年前の遠征の際に立ち寄ったきりであまり接点はない。しかし、グリフォンを連れての投宿には拒否はされなかった。
騎士身分は剥奪されていないので、代官となるフェルディナント様の家に泊まらせてもらう。不思議な今回の訴追についてはなんとなく話題にならず、話はどうしても遠征の際の思い出話と、領主としての苦労話が中心になる。
ザオベル師匠も領主ではあるので領主の愚痴には共感がある。夜通し領主話に花が咲き、遅くまで盃を交わした。
翌朝、フェルディナントさんと共に坂を登り、午後には砦に着く。砦の防御には随分と改善が見られ、守備兵も増えている。砦でまた、一泊をして、コルムへの坂を下る。
下り坂は葛折になっていて、一気には降れないようになっている。しばらくするとコルムの城壁が見える。城門は開いているが、きちんと修理してあって、防御力は十分に見える。
リーシアはコルムの街は初めてだ。前回来た時は上空をキューちゃんで飛んだだけ。街並みはカルルから話を聞いただけだ。コルムは昔からレルムの支配地で、ミュルクヴィズの支配になったのはこのあいだからだ。
レルムの文化がどういうものなのか、リーシアにはとても関心がある。




